2022年10月12日水曜日

自己肯定感とは何か?高める方法を病院薬剤師が考える|2022年10月コラボLIVE配信 ※2026年6月 情報を更新しました

まず、こちらのコラボLIVE配信動画をご覧ください。

はじめに:「自己肯定感」という言葉があふれている時代

「自己肯定感を高めよう」「自己肯定感が低いから○○できない」

ここ数年で、自己肯定感という言葉をよく聞くようになりました。書店には関連書籍が並び、SNSでも頻繁に話題になります。

でも「自己肯定感って、結局何なんだろう?」と、あらためて考えたことはありますか?

言葉は知っているけれど、自分の自己肯定感がどういう状態なのか、どうすれば高められるのか——漠然としたままの方が多いのではないかと思います。

このコラボライブでErikaさんと話しながら、私自身も改めて整理できたことがたくさんありました。この記事では、ライブの内容を踏まえながら、私なりの言葉で「自己肯定感」について書いていきます。


自己肯定感とは何か

自己肯定感とは、**「自分が自分であることをそのまま認め、受け入れられる感覚」**のことです。

「自分は価値ある存在だ」「失敗しても自分は大丈夫だ」という内側からの安心感、と言い換えることもできます。

よく混同されるのが「自己効力感」や「自信」との違いです。

言葉意味
自己肯定感条件なしに「自分でいていい」と感じる感覚
自己効力感「これはできる」という特定の能力への確信
自信経験や実績に基づく「うまくやれる」という感覚

自己肯定感は結果に関係なく存在するのが特徴です。「成功したから自分はOK」ではなく、「失敗しても自分はOK」と思えるかどうか——これが自己肯定感の核心です。


自己肯定感が低いとどうなるのか

自己肯定感が低い状態が続くと、様々な影響が出やすくなります。

人間関係への影響として、他人の評価が気になりすぎる・断れない・自分の意見が言えない・必要以上に謝る、などが挙げられます。

仕事・学習への影響として、失敗を恐れてチャレンジできない・ミスをひどく引きずる・「どうせ自分には無理」と思いやすい、などが起こりやすくなります。

心身への影響として、慢性的な疲労感・自己批判が止まらない・他者と比較してしんどくなる、なども出てきます。

医療現場でも、自己肯定感の低いスタッフは報告・連絡・相談を躊躇しやすく、結果として患者安全にも影響することがあります。これは心理的安全性とも深くつながっています。


自己肯定感が低くなる原因

自己肯定感は生まれつき固定されているわけではなく、生育環境・経験・習慣によって形成され、変化します。

低くなりやすい原因として代表的なものを挙げます。

幼少期の経験として、親や周囲の大人から「もっとがんばれ」「なんでできないの」という言葉を繰り返し受けてきた場合、「ありのままの自分ではダメだ」という感覚が根づきやすくなります。他の子と比較され続けた経験も同様です。

失敗体験の積み重ねとして、失敗を「結果だけ」で評価し続ける環境では、失敗=自分の否定という回路ができやすくなります。

SNSや比較文化として、他者のキラキラした面だけが目に入りやすい現代では、「自分はダメだ」という感覚が強化されやすい構造があります。


自己肯定感を高めるために:具体的なアプローチ

自己肯定感は高めることができます。ただし「今日から急に高くなる」ものではなく、小さな積み重ねによって少しずつ変わっていきます。

① 「できたこと」を意識的に記録する

1日の終わりに「今日うまくできたこと・頑張れたこと」を3つ書き出す習慣は、自己肯定感の土台を育てます。大きな成果である必要はありません。「ちゃんと起きた」「話しかけた」「最後まで読んだ」——それで十分です。

② 「自分への言葉」を変える

「どうせ私には無理」「また失敗した、最低だ」という内なる声は、繰り返すほど自己肯定感を下げます。「うまくいかなかったけど、やってみた」「次はどうしよう」という言葉に少しずつ置き換えていくことが、長期的に効果を持ちます。

③ 他者比較をやめる練習をする

比べるべき相手は「昨日の自分」だけです。これは子どもの褒め方でも同じことを言いましたが、大人の自己肯定感にも同じ原則が当てはまります。

④ 「ありがとう」を受け取れるようにする

自己肯定感が低い人は、褒められたり感謝されたりしても「そんなことないです」と否定してしまいがちです。まず「ありがとうございます」と受け取る練習をするだけでも、自己肯定感の変化につながります。

⑤ 安心できる関係の中で自分を出す

心理的安全性の高い場所で「自分の考えを言えた」「否定されなかった」という体験の積み重ねが、自己肯定感の回復に大きく働きます。逆に、常に否定・批判される環境では自己肯定感は育ちません。


病院薬剤師として、自己肯定感について思うこと

医療現場では、完璧主義になりやすい文化があります。

ミスは許されない。正確さが命。そういう環境の中で、自分への評価が「ミスをしなかったか」だけに偏ってしまうと、自己肯定感はどんどん削られていきます。

後輩や実習生を見ていて感じるのは、「自分に厳しすぎる人」ほど、小さなミスを引きずって立ち直るのに時間がかかるということです。

薬剤師として正確さを大切にしながら、同時に「失敗しても自分は大丈夫」という感覚を持てること——この両立が、長く医療現場で働き続けるためにとても重要だと感じています。

自己肯定感は、患者さんへの接し方にも出ます。自分を大切にできている人は、患者さんへの言葉も自然と温かくなります。


【当時の記録】2022年YouTube100投稿への挑戦

この動画を投稿した2022年10月11日時点で、私はYouTubeに37投稿(限定公開含むと71投稿)を達成していました。

2022年中にYouTube動画を100投稿するという目標を掲げていた時期です。Erikaさんとのコラボライブはその一環で実現したもので、今振り返っても充実した挑戦でした。目標を声に出して宣言し、コツコツと積み上げていく——それ自体が、自己肯定感を育てるプロセスだったと思います。


まとめ

  • 自己肯定感とは「条件なしに自分でいていい」と感じる感覚
  • 自己効力感・自信とは異なり、結果に関わらず存在するもの
  • 低い状態が続くと人間関係・仕事・心身に影響が出やすい
  • 幼少期の経験・失敗体験・比較文化が自己肯定感を下げやすい
  • 高めるには「できたこと記録」「自分への言葉の置き換え」「他者比較をやめる」などの小さな積み重ねが有効
  • 心理的安全性の高い環境は自己肯定感の回復を助ける
  • 医療現場でも「正確さ」と「自分を許せる感覚」の両立が大切

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2022年10月4日火曜日

病院における医薬品の管理とは?薬局長が現場から解説する基礎と実践 ※2026年6月 情報を更新しました

2022年9月30日に配信した動画はこちらです。

はじめに:「面白くない」けれど、最も大切な知識のひとつ

動画の説明文に「基礎講座で面白くない内容」と書いた記憶があります。

確かに、医薬品の管理という話題は派手ではありません。新しい薬の作用機序や最新の治療ガイドラインの方が、勉強していて楽しいと感じる人が多いでしょう。

でも22年間病院で働いてきて、薬局長という立場になった今だからこそはっきり言えます。

医薬品の管理は、薬剤師の仕事の土台です。

管理がしっかりしていない薬局では、患者さんの安全は守れません。期限切れの薬が棚に残っていたり、冷蔵保存が必要な薬が室温に放置されていたり、麻薬の帳簿が合っていなかったり——これらはすべて、医薬品管理の問題です。

地味だけれど、絶対に外せない。それが医薬品管理です。


医薬品管理の全体像

病院における医薬品管理は、大きく以下の領域に分かれます。

管理領域主な内容
在庫管理適正在庫の維持・発注・受入・棚卸し
品質管理温度・湿度・光・有効期限の管理
安全管理ハイアラート薬・麻薬・向精神薬の特別管理
情報管理添付文書・インタビューフォーム・回収情報の把握
供給管理後発品問題・代替品確保・欠品対応

それぞれについて、現場の視点から解説します。


① 在庫管理:適正在庫を維持する

在庫管理の目的は「必要な薬が、必要な時に、必要な量だけある」状態を維持することです。

多すぎると期限切れのリスクが高まり、少なすぎると患者さんへの投与が遅れます。

先入れ先出し(FIFO)の原則は在庫管理の基本中の基本です。新しく入庫した薬品を棚の奥に入れ、古いものを手前に配置する。これを徹底するだけで、期限切れ薬品の発生を大幅に減らせます。

病棟の薬品棚や救急カートの管理でも同じ原則が適用されます。定期的な期限チェックと補充が、安全管理の出発点です。

薬局長として意識していること:
棚卸しは数を数えるだけの作業ではありません。「なぜこの薬品が余っているのか」「なぜここだけ回転が速いのか」を読む機会です。処方動向の変化・病棟の患者層の変化が、在庫の動きに必ず現れます。


② 品質管理:温度・光・湿度・有効期限

医薬品の品質は、保管環境によって大きく影響を受けます。

温度管理は特に重要です。

保存条件温度の目安
室温保存1〜30℃(通常15〜25℃)
冷所保存1〜15℃
冷蔵保存2〜8℃
冷凍保存−20℃以下

冷所保存の薬品が室温に長時間置かれた場合、力価が低下したり変質したりする可能性があります。一方で、すべての冷所保存薬品が「一度でも室温になったら使えない」わけではなく、一定期間であれば室温保存が可能なものも多くあります。

この判断ができる薬剤師が、現場では頼りにされます。

**光・湿度についても意識が必要です。**ニトログリセリン製剤・一部の抗がん剤・注射薬などは遮光保存が必要で、PTP包装から取り出した薬品の保管にも注意が必要です。

有効期限の管理では、使用期限が近い薬品の把握と優先使用の徹底が重要です。特に救急カートや手術室に常備されている薬品は、使用頻度が低いため気づかないうちに期限切れになることがあります。定期的なチェック体制が必要です。


③ 安全管理:ハイアラート薬・麻薬・向精神薬

**ハイアラート薬(高危険薬)**とは、使用方法を誤った場合に患者さんに重大な害を与える可能性が高い薬剤のことです。

代表的なものとして、インスリン注射剤・ヘパリン注射剤・濃厚電解質製剤(塩化カリウム・塩化ナトリウム高濃度製剤)・抗悪性腫瘍薬・筋弛緩薬などが挙げられます。

これらは以下のような特別な管理が求められます。

他の薬品と区別して保管する(専用の場所・専用の棚・専用のラベル)。投与前のダブルチェックを必須とする。希釈が必要な薬品は希釈済み製剤を使用するか、調製手順を標準化する。

麻薬の管理は法律(麻薬及び向精神薬取締法)によって厳格に定められています。

鍵のかかる堅固な金庫での保存・麻薬帳簿への記録・廃棄時の手続き・在庫数の一致確認——これらは薬剤師が責任を持って行う業務であり、不正確な記録や紛失は法的問題に直結します。

病棟での麻薬管理(モルヒネ・オキシコドンなどの医療用麻薬)においても、処方箋との照合・払出し記録・残量確認が必須です。

向精神薬もベンゾジアゼピン系薬品を中心に管理が必要で、施錠保管・記録管理が求められます。


④ 情報管理:添付文書・回収・改訂情報の把握

医薬品の情報は常に更新されています。添付文書の改訂・効能追加・警告の変更・新たな副作用情報——これらを把握し、現場に伝えることも薬剤師の重要な役割です。

特に注意が必要なのは医薬品の自主回収(リコール)情報です。PMDAから発信される回収情報を定期的にチェックし、該当品が院内にないか確認する体制を整えておくことが必要です。

また医薬品の名称変更・規格変更・包装変更なども、取り違えや誤投与のリスクになります。薬局内への情報共有と病棟スタッフへの周知が大切です。


⑤ 供給管理:後発品問題と代替品確保

2021年以降、後発品メーカーの製造管理問題に端を発した医薬品供給不安が続いています。

「いつも使っている薬が手に入らない」という事態は、処方医・看護師・患者さん全員に影響します。代替品の選定・処方医への情報提供・患者さんへの説明——この一連の対応を薬剤師がリードすることが求められます。

供給不安への対応で大切なのは次の3点です。早期に情報を把握すること(卸業者・PMDAからの情報収集)、代替品を事前に検討しておくこと(薬効が同等の先発品・他のメーカーの後発品・剤形変更の可能性)、処方医・病棟スタッフと情報を共有することです。

薬局長として、供給不安の情報が入ったときに「誰が・何を・いつまでに動くか」を即座に判断できる体制を作っておくことの重要性を、この数年で強く感じています。


【当時の記録】2022年YouTube100投稿チャレンジ

この動画を投稿した2022年10月4日時点で、30投稿(限定公開含むと64投稿)を達成していました。2022年中に100投稿を目標にしていた時期の一本です。「面白くない内容」と書きながらも、基礎をきちんと動画にして残しておくことの大切さを信じていたからこそ作った一本だと思っています。


まとめ

  • 医薬品管理は地味だが薬剤師の仕事の土台
  • 在庫管理は「先入れ先出し」の徹底と適正在庫の維持が基本
  • 品質管理では温度・光・湿度・有効期限を意識する
  • ハイアラート薬は区別保管・ダブルチェックが必須
  • 麻薬・向精神薬は法的義務として厳格な記録と管理が求められる
  • 添付文書改訂・回収情報は常にアンテナを張っておく
  • 後発品供給問題への対応は薬剤師がリードする場面
  • 「面白くない」と感じる基礎ほど、現場では確実に問われる

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