RA治療においてステロイド(糖質コルチコイド:GC)は劇的な効果を発揮しますが、その副作用も深刻です。「使い方」を誤ると患者さんに大きなダメージを与えかねません。今回はGCの正しい使い方を解説します。
ステロイドとRA治療の歴史
1950年代、メイヨークリニックのHence博士らが、コルチゾン(GC)をRA患者さんに投与したところ劇的な効果を示しました。この業績でノーベル医学生理学賞を受賞しています。
「まるで別人のように動けるようになった」——それほどGCの効果は劇的だったのです。しかし長期使用による深刻な副作用が明らかになり、現在は「最小量・短期間」が原則になっています。
RAにおけるGCの役割
現在のガイドライン(日本リウマチ学会2024年・EULAR2022・ACR2020)における位置づけ:
GCは補助的治療薬
適切な役割:
- csDMARD(MTXなど)を開始し効果が出るまでの「ブリッジ治療」
- 再燃時などの一時的な症状コントロール
原則:
- 必要最小量(できるだけ少ない量)
- 可能な限り短期間(数ヶ月以内)で漸減中止
各ガイドラインの方針:
- EULAR 2022:漸減・中止を推奨
- ACR 2020:回避する(より厳格な立場)
- JCR 2024:漸減・中止
GCの投与量と有害事象の関係
GCはプレドニゾロン(PSL)換算での投与量によってリスクが変わります。
0〜5mg/日:多くの患者でベネフィット>リスク 5〜7.5mg/日:中間域。個々の患者のリスク因子による 7.5mg/日超〜10mg/日:リスクが上昇 10mg/日超:多くの患者でベネフィット<リスク
GCの主なリスク
糖尿病(DM)発症リスク
PSL 5mg/日を服用した場合のDM発症リスク(非服用患者比):
- 過去1ヶ月以内の服用:1.2倍
- 過去3ヶ月以内の服用:1.43倍
- 過去6ヶ月以内の服用:1.48倍
GC服用歴が6ヶ月以上前の場合はDMリスクへの影響がほぼなくなる(影響は直近6ヶ月の服用に限定)。
重篤感染症リスク
PSL 5mg/日を使用し続けた場合の重篤感染症リスク(非使用者比):
- 3ヶ月使用:30%上昇
- 6ヶ月使用:46%上昇
- 3年連続使用:100%上昇(2倍)
「たった5mg」でも3年続けると感染症リスクが2倍になるという衝撃的なデータです。
その他のGCのリスク
- 高血圧(ナトリウム貯留・体液貯留)
- 骨粗鬆症(骨密度低下→骨折リスク)
- 動脈硬化・心血管疾患(CVD)
- 皮膚の菲薄化・創傷治癒遅延
- 白内障・緑内障
- 精神症状(高揚・不眠・うつ)
- 副腎抑制(急な中止で副腎クリーゼ)
CVDリスクを左右する因子
GCによるCVDリスクは、患者個々の状況によって異なります。
CVDのリスクを高める因子:
- 男性
- 重度の関節外疾患
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症などの合併症
- RF陽性かつ/またはACPA陽性
CVDリスクを低下させる因子:
- 健康的な食事
- 適度な運動
- 正常な体重の維持
- 食塩制限
- 薬物治療(スタチン・ACE阻害薬・降圧薬など)
骨粗鬆症予防の重要性
GCを長期使用するRA患者では、骨粗鬆症予防が必須です。
日本骨粗鬆症学会のガイドラインでは、GC内服患者に以下を推奨:
- カルシウム・ビタミンD補充
- ビスホスホネート製剤(アレンドロン酸・リセドロン酸など):第一選択
- 必要に応じてデノスマブ・テリパラチド
薬剤師は「GCが処方されているRA患者さんに骨粗鬆症予防薬が一緒に処方されているか」を確認することが大切です。
GCを減らしにくい患者さんへの対応
「GCをなかなか減らせない」という状況はよくあります。その場合の対策:
① 生物学的製剤やJAK阻害薬を使って疾患活動性をより強力に抑制する ② GCをゆっくり(2〜4週ごとに1mg程度)漸減する ③ 骨粗鬆症・糖尿病・CVDなどの合併症予防を徹底する
急な中止は禁忌(副腎クリーゼのリスク)。必ず漸減で。
まとめ
- GCはRAに劇的効果を示すが副作用も深刻
- 現代のRA治療では補助的位置づけ。短期間・最小量で漸減中止が原則
- PSL 5mg/日でも3年使用で感染症リスク2倍
- DM・CVD・骨粗鬆症・感染症リスクに注意
- GC長期使用患者には骨粗鬆症予防薬(ビスホスホネートなど)を必ず確認
- 急な中止は副腎クリーゼのリスクがあり禁忌
次回は「生物学的製剤①:TNF阻害薬(インフリキシマブ・エタネルセプト・アダリムマブ)」を解説します。
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