2026年6月29日月曜日

よくあるNG薬歴と修正例5選:新人薬剤師が陥りがちな失敗【薬歴シリーズ⑧】

 こんばんは、田浦マインドです。

今回は薬歴シリーズの総まとめとして「よくあるNG例と修正例」を5つ紹介します。自分の薬歴と照らし合わせてセルフチェックしてみてください。


NG例①:事務的な記録になってしまう

悪い例

S:体調良好。
O:ロキソニン錠60mg 3T 3×毎食後 14日分
A:特に問題なし。
P:用法用量を説明した。

何を確認したのか、何を指導したのかが全く伝わりません。次回この薬歴を読んだ別の薬剤師は何もわかりません。

改善例

S:「先月から続いていた肩こりが良くなってきた」と自己申告あり。
  痛みの程度は10段階で8→4に改善。
O:ロキソニン錠60mg 3T 3×毎食後 14日分(前回から変更なし)
A:NSAIDsの効果発現が認められるが、完全に症状は消失していない。
  長期服用による胃腸障害リスクに注意。
P:NSAIDsの長期服用リスクについて説明。
  胃部不快感の有無を確認し、症状出現時は報告するよう指導。
  次回来局時に症状の変化を確認予定。

NG例②:SOAPの要素が混在している

悪い例

S:アムロジピン5mg服用中。血圧高め。
O:血圧手帳確認、服薬指導実施。
A:降圧剤の効果不十分。
P:塩分制限について説明した。

SにはOの内容が混ざり、OにはPの内容が混ざっています。S・O・A・Pの役割を意識して書き分けましょう。

改善例

S:「最近、朝の血圧が高めです」との訴えあり。めまいなどの症状はなし。
  減塩に取り組んでいるが、外食が週3回程度あるとのこと。
O:アムロジピン5mg 1T 1×朝食後
  血圧手帳:145-155/85-90mmHg(朝)、135-140/80-85mmHg(夕)
A:朝の血圧値が目標値(140/90mmHg未満)を超えており、降圧効果が不十分。
  夕食時の塩分摂取が影響している可能性あり。
P:外食時の塩分摂取を減らす具体的な方法(汁物を残す・醤油を控えるなど)を提案。
  2週間後の血圧値の変化を確認予定。

NG例③:個別性が欠如している

悪い例

S:特に問題なし。
O:メトホルミン錠250mg 6T 3×毎食後
A:2型糖尿病治療中。
P:低血糖症状について説明した。

この薬歴を読んでも「どんな患者さんなのか」が全くわかりません。

改善例

S:「先日、昼食を抜いたら手が震えて冷や汗が出た」との訴え。
  症状は砂糖入りジュースを飲んで回復。
  最近、ダイエットのため食事量を減らしているとのこと。
O:メトホルミン錠250mg 6T 3×毎食後
  HbA1c 7.2%(1ヶ月前)
A:食事量減少に伴う低血糖症状の出現。メトホルミン単独では通常低血糖リスクは
  低いが、食事摂取不足により相対的な血糖低下が生じている可能性。
P:低血糖の症状と対処法について再度説明。
  食事を抜かずに1食あたりの量を調整する方法を提案。
  低血糖時の対応セットの携帯を推奨。
  次回来局時に食事状況と血糖値を確認予定。

NG例④:臨床判断の記載が不足している

悪い例

S:咳が出る。
O:プラバスタチン10mg 1T 1×夕食後
A:副作用の可能性。
P:医師に相談するよう伝えた。

「何の副作用?」「なぜそう考えた?」が全く書かれていません。根拠のない評価では信頼性がありません。

改善例

S:「2週間前から就寝時に乾いた咳が出るようになった」と訴えあり。
  痰や発熱はなし。花粉症などのアレルギー歴なし。
O:プラバスタチン10mg 1T 1×夕食後(2ヶ月前から服用開始)
  リシノプリル5mg 1T 1×朝食後(2週間前に開始)
A:咳の発症時期とACE阻害薬(リシノプリル)開始時期が一致。
  ACE阻害薬による空咳の副作用を疑う。
  スタチンでは一般的に咳症状は起こりにくい。
P:ACE阻害薬の副作用(空咳の発生機序・出現率約10%)について説明。
  副作用疑い報告書を作成し、担当医に情報提供。
  ARBなど他クラスの降圧薬への変更を検討してもらうよう提案。
  次回来局時に症状の変化を確認予定。

NG例⑤:患者視点が欠如している

悪い例

S:内服コンプライアンス不良。
O:レボドパ・カルビドパ配合錠 3T 3×毎食後
A:薬効が十分に得られていない。
P:内服の重要性を説明した。

「コンプライアンス不良」と言っても、なぜ飲めないのかを把握しなければ解決策は立てられません。

改善例

S:「薬を飲むタイミングが難しく、時々飲み忘れる」と訴えあり。
  特に昼食時の服用が困難とのこと。独居で薬の管理は自分で行っている。
O:レボドパ・カルビドパ配合錠 3T 3×毎食後
  服薬状況:朝・夕はほぼ服用できているが、昼は週2-3回忘れるとのこと。
A:昼食時の服薬遵守率が低く、午後の症状悪化に関連している可能性あり。
  独居であり、服薬管理のサポートが必要。
P:一包化調剤の提案(朝・昼・夕で色分けし、視認性向上)。
  昼食時にアラームを設定するよう助言。
  次回来局時に一包化後の服薬状況と症状を確認。

よくあるNG薬歴 チェックリスト(まとめ)

  • □ 患者の発言(S)と薬剤師の評価(A)が混ざっていないか
  • □ 数値や頻度など具体的に記録しているか
  • □ 次回確認すべきことを必ず残しているか
  • □ 「指導した」「説明した」だけで終わっていないか
  • □ 個別性のある記録になっているか(誰の薬歴でも使えるような汎用的な文章になっていないか)

まとめ

薬歴の5大NG:

  1. 事務的な記録(何をしたかがわからない)
  2. SOAPの要素が混在(S・O・A・Pの役割を無視)
  3. 個別性の欠如(誰の薬歴かわからない)
  4. 臨床判断の根拠不足(なぜそう評価したかがわからない)
  5. 患者視点の欠如(「なぜ飲めないか」を把握していない)

良い薬歴は「次回読んだ別の薬剤師が、患者の状況を理解できる記録」です。

次回からはPOS(問題志向型システム)シリーズとして、薬剤師の服薬指導の考え方を解説していきます。


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P(計画)の書き方⑦ A(評価)の書き方⑥ 

薬剤師の話ブログ(専門情報)

2026年6月28日日曜日

P(計画)の書き方:次回につながる記録の作り方【薬歴シリーズ⑦】

 こんばんは、田浦マインドです。

SOAPの最後の要素「P(計画)」は、薬剤師が実際に行った指導内容と、次回に向けた対応方針を記録する部分です。「指導した」で終わらない、継続的なケアにつながる記録の書き方を解説します。


Pとは何か

P(Plan:計画)とは、A(評価)に基づいて行った服薬指導の内容と、今後の対応方針を記録したものです。

「実施したこと」だけでなく「今後どうするか」まで含まれるのがポイントです。


Pに含める3つの要素

① 薬物療法の最適化提案

  • 処方提案(追加・変更・中止など)
  • 医師へのフィードバック内容
  • 用法・用量の調整提案

② モニタリング計画

  • 副作用モニタリング項目
  • 効果確認の方法と時期
  • 次回確認すべき事項

③ 患者教育・指導内容

  • 今回実施した服薬指導の内容
  • 生活習慣の改善アドバイス
  • 副作用への対処法

Pの記載例(良い例)

P:脂質異常症:ロスバスタチンの効果と副作用について説明。食後服用の重要性を強調。
  3ヶ月後の採血で効果確認予定。
  血圧管理:自宅血圧測定を継続、1日1回以上測定するよう指導。食塩摂取量の減少を助言。
  次回来局時に血圧手帳を確認。
  胃部不快感:NSAIDsの副作用について説明。医師に胃粘膜保護薬の追加を依頼する旨を伝達
  (疑義照会実施)。
  下肢浮腫:浮腫の程度をモニタリングするよう指導。悪化時は受診を勧奨。
  次回来局時に確認。

問題点ごとに対応策が明記され、次回の確認事項もしっかり残っています。


よくあるNG例と修正例

NG例①:指導内容だけを書いてしまう

P:服薬指導実施。副作用なし。次回も継続予定。

→ 何をどう指導したのか全くわからず、次回に何も活かせません。

修正例:

P:アムロジピンの副作用(顔面紅潮・下肢浮腫)について説明。
  現時点で副作用の訴えなし。次回来局時に副作用・血圧の経過を確認。

NG例②:次回につながらない記録

P:服薬状況良好。問題なし。

→ 次回来局時に何を確認するべきかが残らず、同じことを毎回ゼロから聞くことになります。

修正例:

P:継続指導。次回は低血糖症状の有無も確認する。
  SMBGデータを持参してもらうよう依頼。

NG例③:漠然とした指導内容

P:副作用について指導した。

→ 「何の」「どんな」副作用について指導したのか不明。

修正例:

P:スタチン系薬剤の副作用として筋肉痛・脱力感が出ることがあると説明。
  筋肉痛が出現した場合は服用を中止して来局するよう指導。

医師へのフィードバック・疑義照会の記録

薬剤師が医師に情報提供や疑義照会を行った場合は、必ずPに記録します。

記載例:

P:咳について医師に情報提供書を作成して提出。
  ACE阻害薬(リシノプリル)からARBへの変更を提案。
  次回来局時に処方変更の有無と症状改善を確認。

「情報提供した」だけでなく、どのような提案をしたかまで記録しておくと、次回の確認に役立ちます。


次回確認事項の記録が重要な理由

「次回〇〇を確認」という記録は、一見単純ですが非常に重要です。

理由は3つあります。

  1. 継続的なケアができる:前回の課題を次回に持ち越して解決できる
  2. 引き継ぎがスムーズ:他の薬剤師が担当しても、前回の課題を把握できる
  3. 信頼関係の構築:「先生、先日お話しされていた〇〇のことですが…」と声かけでき、患者さんに「覚えてくれている」と感じてもらえる

セルフチェックリスト(P)

  • □ 今後の対応方針を明確に記録しているか
  • □ 医師・看護師への情報提供が必要なら記載しているか
  • □ 「指導した」で終わらず「次回確認事項」を残しているか
  • □ 問題点ごとに対応策を明記しているか
  • □ 具体的かつ実行可能な計画か

まとめ

  • Pは「今回したこと」と「次回どうするか」の両方を記録する
  • 問題点ごとに対応策と次回確認事項を明記する
  • 「指導した」「説明した」だけでは不十分。何を・なぜ・どう指導したかを書く
  • 医師へのフィードバック・疑義照会内容も記録する
  • 次回確認事項の記録が継続的なケアの基盤になる

次回はSOAPの「よくあるNG例と修正例5選」をまとめて解説します。


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A(評価)の書き方⑥ 

薬剤師の話ブログ(専門情報)

2026年6月27日土曜日

A(評価)の書き方:薬剤師の臨床判断を記録する【薬歴シリーズ⑥】

 こんばんは、田浦マインドです。

SOAPの中で最も難しいと感じる薬剤師が多いのが「A(評価)」です。S・Oの記録は比較的わかりやすいのですが、Aでは薬剤師自身の「臨床判断」を書かなければなりません。今回はAの書き方を具体例とともに解説します。


Aとは何か

A(Assessment:評価)とは、収集したS・Oの情報をもとに、薬剤師が薬学的評価を行い、問題点を抽出したものです。

言い換えれば**「なぜそのような指導(P)を行ったのか、その根拠」**がAです。

AがなければPの根拠が不明になり、「なぜこの指導をしたのか」が後で読んだ人に伝わりません。


薬学的評価の3つの視点

Aを書く際は、以下の3つの視点で評価します。

① 有効性の評価

  • 治療目標に対する効果
  • 症状改善の有無
  • 検査値の改善状況

「血圧目標140/90mmHg未満に対し、現在138/82mmHgで目標達成」のように、目標値と現状を対比して評価します。

② 安全性の評価

  • 副作用症状の有無と程度
  • 検査値異常との関連
  • 薬物相互作用のリスク

「咳の発症時期とACE阻害薬開始時期が一致しており、薬剤性の空咳を疑う」のように、薬と症状の因果関係を評価します。

③ アドヒアランスの評価

  • 服薬状況
  • 理解度
  • 服薬上の問題点

「週2〜3回の飲み忘れがあり、血圧コントロール不十分の一因となっている可能性あり」のように、服薬状況と治療効果を関連づけて評価します。


Aの記載例(良い例)

A:1. 血圧コントロール:目標値(140/90mmHg未満)に近づいているが、まだ十分ではない。
     自宅血圧も高値傾向。
  2. 脂質異常症:LDL-Cは改善傾向だが目標値未達。ロスバスタチン追加は妥当。
  3. ロキソニンによる胃部不快感の可能性あり。NSAIDsによる胃粘膜障害を疑う。
  4. 下肢浮腫はアムロジピンの副作用の可能性あり。

複数の問題点を番号で整理し、優先順位を意識しながら記載されています。「なぜそう考えたのか」という臨床判断の根拠も含まれています。


よくあるNG例と修正例

NG例①:評価がない

A:特に問題なし。

→ 本当に何も評価がないのか、単に書かなかっただけなのか判断できません。「副作用は認めず、服薬アドヒアランスも良好」など、何らかの評価を書きましょう。

修正例:

A:副作用は認めず、服薬アドヒアランス良好。血糖コントロールは目標範囲内。

NG例②:Sと混在している

A:患者は副作用があると言っていた。

→ これはSに書くべき内容です。Aには薬剤師の評価・判断を書きます。

修正例:

A:眠気の発症時期と処方薬(アレロック)開始時期が一致しており、
  薬剤性の眠気(抗ヒスタミン作用)の可能性あり。

NG例③:断定しすぎる

A:アレロックの副作用で眠気が発現している。

→ 確定診断は医師の仕事です。薬剤師は「可能性あり」と表現します。

修正例:

A:眠気はアレロックの副作用(中枢神経系への作用)の可能性あり。
  他の原因(睡眠不足、他疾患)も否定できないが、薬剤性が最も疑わしい。

Aを書くのが難しい理由と対策

Aが難しい最大の理由は、薬剤師としての「臨床判断」が求められるからです。

この力を養うためには:

  • 疾患・薬剤の知識を継続的に更新する
  • 定期的に自分の薬歴を振り返る
  • 先輩薬剤師に薬歴の添削を依頼する
  • 症例検討会で自分の症例を発表する

継続的な学習と振り返りで確実に成長できます。


問題点が複数ある場合の整理方法

複数の問題点がある場合は、番号で整理すると読みやすくなります。

A:1. 服薬アドヒアランス:飲み忘れ頻度が高く、血圧コントロール不十分の要因の可能性
  2. アムロジピンの副作用:下肢浮腫(副作用の可能性あり、経過観察中)
  3. 脂質異常症:LDL-C目標値未達、ロスバスタチン追加後の効果確認中

問題点が多い場合は、優先度の高いものから書く習慣をつけましょう。


セルフチェックリスト(A)

  • □ S・Oをもとに薬剤師が判断した内容を書いているか
  • □ 「副作用なし」と断定せず「副作用の可能性なし」と表現できているか
  • □ アドヒアランス・副作用・効果について評価できているか
  • □ Pの根拠になる内容が書かれているか

まとめ

  • Aは「なぜそのような指導(P)をしたのか」の根拠を書く欄
  • 評価の3視点:有効性・安全性・アドヒアランス
  • 副作用疑いは「断定」ではなく「可能性あり」と表現する
  • 複数の問題点は番号で整理し、優先度の高いものから書く
  • AがないとPの根拠が伝わらない

次回はP(計画)の書き方——次回につながる記録の作り方を解説します。


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O(客観的情報)の書き方⑤ 

薬剤師の話ブログ(専門情報)