薬剤師のお仕事シリーズ最終回は「本音」をお伝えします。22年間病院薬剤師として働いてきた私が感じてきた「苦労」と「やりがい」「魅力」を正直にお届けします。
薬剤師の3つの苦労
① 薬の種類がどんどん増えて覚えられない
医薬品は毎年新しいものが登場します。新しい作用機序の薬・ジェネリック医薬品・バイオ医薬品……「全部覚えないといけないの?」と思うほどの量です。
私が薬剤師になった2005年当時と比べても、薬の数は格段に増えました。医薬品の数は国内だけで数万品目以上。全部を暗記するのは不可能なので、「調べ方を知る」「信頼できる情報源にアクセスする」スキルが重要です。
継続的な勉強は薬剤師の宿命です。これが苦労でもあり、成長でもあります。
② いろんな患者さんに対応するのが大変
患者さんは一人ひとり全く違います。
- 薬の説明を素直に聞いてくれる患者さん
- 「こんな薬は飲みたくない」と拒否する患者さん
- 「先生に聞いてきてくれ」と怒る患者さん
- 認知症で説明が届かない患者さん
- 言葉の壁がある外国人の患者さん
一つの対応法がすべての患者さんに通じることはありません。それぞれの患者さんに合わせて柔軟に対応するコミュニケーション力が求められます。これが大変でもあり、やりがいでもあります。
③ 他の医療従事者との関係構築が大変
医師・看護師・管理栄養士・理学療法士……多くの職種と連携する病院薬剤師にとって、人間関係の構築は永遠の課題です。
「あの先生は処方提案を受け入れてくれないな」「あの看護師さんとはうまくコミュニケーションが取れない」という悩みは、どの薬剤師でも経験します。
だからこそ私はコーチング・アンガーマネジメント・コミュニケーションスキルを学び続けてきました。
薬剤師の3つのやりがい
① 知識が増え続ける
新しい薬・新しい治療法・新しい研究結果——薬剤師として働いていると、常に最新の医療情報を学び続けられます。
「これが役立ったのか!」という瞬間の知的興奮は、何年経っても色褪せません。「一生勉強できる仕事」です。
② 患者さんに合わせた服薬指導で喜んでもらえる
「先生に聞けなかったことをあなたに聞けてよかった」 「この薬のせいで調子が悪かったことを教えてくれてありがとう」 「あなたがいてくれて安心して退院できました」
こういった言葉が、薬剤師としての原動力です。薬のプロとして患者さんの治療を支えられている実感が持てます。
③ 医療チームの一員として連携できる
医師・看護師・栄養士などと一緒に患者さんの治療方針を議論する——これは病院薬剤師ならではの体験です。
自分の提案が採用され「薬剤師の視点があってよかった」と思ってもらえた時の達成感は格別です。
病院薬剤師の5つの魅力
① 他職種との関わりがあり、チーム医療に貢献できる
② 医師とのコミュニケーションが多く、処方提案ができる
③ 認定制度が充実しており、キャリアアップを目指せる
④ カルテ・検査データを確認しながら高度な薬学的判断ができる
⑤ 注射薬・抗がん剤など多種多様な医薬品を扱える
私が薬剤師であり続ける理由
22年間、離島・僻地・熊本地震・能登半島地震の現場……様々な場所で薬剤師として働いてきました。
離島の沖永良部島では「島内唯一の薬剤師」として、医師・看護師と密に連携しながら島の方々の健康を守りました。
熊本・能登の被災地では、「薬剤師が来てくれた」という安心感を現地の方々から感じました。
どんな場所でも「薬の専門家」として社会に貢献できる——これが薬剤師という仕事の最大の魅力だと思っています。
薬剤師を目指す方へ
小学校で授業をした時、最後に子どもたちにこう伝えました。
「薬剤師になることよりも大切なのは、なぜ薬剤師になりたいのかを自分で考えることです。人の役に立ちたい・科学が好き・医療に興味がある——どんな理由でもいい。その気持ちが、長い勉強を支えてくれます」
薬剤師は国家資格であり、社会的信用があり、一生使えるスキルを持てる職業です。一家に一人薬剤師がいれば、親戚・友人から「これって飲み合わせ大丈夫?」「この薬どういう意味?」と頼られます(笑)
「薬剤師って素晴らしい!」——22年経った今も、その思いは変わりません。
シリーズ全10記事おさらい
① 薬剤師ってどんな仕事?基本をわかりやすく解説 ② もし薬がなかったら?薬の大切さを考える ③ 薬剤師になるには?薬学部・国家試験の全貌 ④ 薬剤師の仕事内容:調剤・服薬指導・薬歴管理 ⑤ 調剤薬局・ドラッグストア薬剤師の違い ⑥ 病院薬剤師の仕事と魅力 ⑦ 在宅医療・学校薬剤師という働き方 ⑧ 製薬会社・化粧品・スポーツチームで働く薬剤師 ⑨ 公務員薬剤師(麻薬取締官・自衛隊・保健所・刑務所) ⑩ 薬剤師の苦労・やりがい・魅力まとめ(本記事)
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