2026年6月7日日曜日

「島から出られない」離島薬剤師が抱えた閉塞感と本音【離島医療シリーズ④】

こんばんは、田浦マインドです。

離島医療シリーズ第4回は、離島薬剤師の「悩みと閉塞感」について正直にお話しします。

良いことばかりではありません。離島勤務のリアルな辛さも、包み隠さずお伝えします。


離島薬剤師の悩み【交通・情報編】

交通機関が天候に左右される

船も飛行機も、悪天候で欠航します。「今日帰れるかな」「薬は届くかな」という不安は、都市部ではほぼ経験しないものです。

情報量が少ない

離島は本土に比べて、どうしても情報量が少なくなります。最新の医薬品情報、学会発表、研究会——情報を得るために本土に出ていかなければならない機会が多い。

学会・勉強会に参加しにくい

離島から学会に行くには、前泊・後泊が必要になることも多く、移動だけで1〜2日かかります。「勉強したいのに、なかなか行けない」という葛藤がありました。

薬がすぐに手に入らない

前回お話しした通りです。救急で必要な薬が手元にない——この緊張感は離島にいる間、ずっとありました。


離島薬剤師の悩み【精神的・環境編】

モチベーションが続きにくい

人員が少なく、業務の幅も限られてくると、「自分は成長しているのか」という不安が湧いてきます。

閉塞感がある

これが一番きつかったかもしれません。

「島から出られない。この生活が一生続くのかという」という気持ち。

特に長く離島に勤務していると、「都会の病院に戻れないんじゃないか」「オーダリングシステムや電子カルテから遠ざかっていく」という焦りがありました。

特診が週末に多い

離島では、専門医が定期的に来島して診察する「特診(特別診療)」という形態があります。これが週末に集中しがちなため、休みを取りにくい状況が続きました。


Dr.コトーのモデルの先生も言っていた

鹿児島県下甑島で30年間離島医療を支えた、Dr.コトーのモデルとなった先生がこんな言葉を残しています。

「半年のつもりが、もう半年、もう半年と延びていく中で、自分はこのままここで終わってしまうのではないかという気持ちを抑えることが一番つらかった。それでも、これもやろう、あれもやろうと自分の挑戦を続けたことが自分を支えてきました」

——これは薬剤師である私自身の気持ちとも、完全に重なります。


自分が経験した閉塞感

沖永良部病院から山川病院(僻地の病院)に転勤した時のことです。

「常勤薬剤師がいなくなるから、半年だけ来てほしい」という約束で転勤しました。

しかしその約束をした事務長は栄転され、「半年でいい」という話を知っている人はもうどこにもいない——。

「関西にいつ帰れるんだろう…」

「半年のつもりがもう半年もう半年と延びていく中で、このまま都会に戻れないんじゃないかという気持ちがツラかった。それでも、みんなで勉強会や研修会を企画しよう、臨床研究もやろう、薬剤師を探しに就職説明会にも行こう、と自分の挑戦を続けたことが自分を支えてきたと思っています。」

これが、私の正直な気持ちでした。


それでも離島に行って良かった

辛いことをたくさん書きましたが、それでも——離島に行って、本当に良かったと思っています。

  • 自分で考えて動く力がついた
  • 全国から来た医師・研修医・看護師・薬剤師の仲間ができた
  • 臨床の現場を幅広く経験できた
  • 不便な状況下での工夫と柔軟な思考が身についた

この2年間が、今の自分の薬剤師としての土台になっています。


まとめ

  • 交通・情報・薬の入手困難など、環境的な悩みは多い
  • 「島から出られない」閉塞感は、長期勤務になるほど重くなる
  • しかし、その中で「それでも前に進もう」と選んだことが成長につながった
  • 辛い経験があるからこそ、今の自分がある

次回は、離島での「幅広い業務経験」と、それが薬剤師としての成長にどうつながったかをお話しします。


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深夜5時のオンコール「心筋梗塞の患者が来た!」③ 

薬剤師になって良かったこと・大変なこと本音 

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2026年6月6日土曜日

深夜5時のオンコール「心筋梗塞の患者が来た!」離島薬剤師の当直事情【離島医療シリーズ③】

 こんにちは、田浦マインドです。

離島医療シリーズ第3回は、離島薬剤師の「オンコール業務」についてです。

深夜・早朝に鳴り響く電話——その先にあったリアルなエピソードをお伝えします。


離島の病院に薬剤師の当直はない

まず知っておいていただきたいのは、離島の病院には薬剤師の当直がありません。

全ての病院が「オンコール体制」です。

薬剤師がいない時間帯は、医師の指示のもとで看護師が調剤を行います。ただし麻薬については「薬剤師オンコールが麻薬の調剤を行う」という院内ルールを定めている病院もありました。

つまり——深夜でも早朝でも、必要があれば電話がかかってきます。


どんな内容のオンコールがあるのか?

実際にどんな内容で呼び出されたかをご紹介します。

  • 「薬がどこにあるかわからない」
  • 「分包機の使い方がわからない(詰まった・紙がなくなった)」
  • 「粉薬・水薬の計算の仕方がわからない」
  • 「手書きカルテで医師が処方した薬が何なのかわからない」
  • 「〇〇という薬が必要なので手配してほしい」
  • 「薬物中毒の患者が救急で来たので調べてほしい」
  • 「〇〇と同じ成分や同系統薬は何がある?」

バラエティに富んでいますね(笑)。

そして驚いたのは——次に勤務した山川病院(僻地の病院)に勤務していた時に、沖永良部病院からオンコールがかかってきたこと。 転勤した後も、別の島の病院から電話がかくることもあるのです(笑)。それだけ病院同士のつながりが強く、頼り合う文化がありました。


忘れられないオンコールの話

ある朝、午前5時頃に電話が鳴りました。

「心筋梗塞の患者が今来ています。麻薬を使いたいのですが!!」

布団から飛び起きました。

自宅から病院まで走って2〜3分。ダッシュで駆けつけ、塩酸モルヒネ注を払い出しに行きました。

離島では病院と自宅が近い場合が多く、それが迅速な対応を可能にしています。

この経験は今でも鮮明に覚えています。「薬剤師がいてくれてよかった」という言葉は、何にも代えられません。


生血輸血——4回、自分の血を捧げた

もうひとつ、離島ならではの経験をお話しします。

生血輸血という言葉を聞いたことがありますか?

離島では、緊急時に必要な血液が足りないという事態が起こることがあります。そんな時、病院スタッフが直接献血して輸血するのが「生血輸血」です。

優先順位は ① 勤務中の職員 → ② 勤務外の職員 → ③ 自衛隊 → ④ 一般の志願者

私は沖永良部島の2年間で、4回、生血輸血に協力しました。

そして後日、自分が献血した患者さんに服薬指導できた時——「献血してよかった」と心から実感しました。

また、RHマイナス型の血液が必要になった時——町内会の放送で「私の血を使ってください」と呼びかけが流れました。

島民の方が駆けつけてくれました。

「誰かのために」という温かい心に、胸が熱くなりました。


島外への救急搬送手段

島で対応しきれない重症患者は、島外へ搬送します。

その手段は3つ。

① 徳洲号 徳洲会グループの離島病院が共同で所有する6人乗りのセスナ機。主に救急患者の移送や、定期便が欠航した際の医師の移動に使用します。

② 自衛隊のヘリコプター 緊急時に要請できます。

③ U-PITS(ユーピッツ) 沖縄本島周辺離島からの患者搬送を目的とした民間の救急ヘリコプター搬送システムです。

沖永良部病院が開院した年、島外搬送が半分程度まで減ったと聞きました。「医療が島で完結できる」——これがどれほど島民にとって安心につながるか、実感した瞬間でした。


まとめ

  • 離島の薬剤師はオンコール体制で、深夜・早朝の呼び出しがある
  • 麻薬払い出しや緊急対応を単独で判断・対応する場面がある
  • 生血輸血に4回協力——島の医療の一員として血を捧げた体験
  • 島外搬送にはセスナ・自衛隊ヘリ・民間ヘリの3手段がある

次回は、離島薬剤師の「悩みと閉塞感」について正直にお話しします。


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離島に薬が届かない!薬の欠品危機② 

離島勤務ってどうなの?① 

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2026年6月5日金曜日

離島に薬が届かない!?薬剤師が経験した「薬の欠品危機」【離島医療シリーズ②】

 こんばんは、田浦マインドです。

離島医療シリーズ第2回は、離島薬剤師の最大の悩みと言っても過言ではない「薬の管理」についてです。

都市部ではあたりまえに翌日届く薬が、離島では全く別の話になります。


離島には医薬品の卸問屋がない

まず大前提として、沖永良部島には医薬品の卸問屋がありません。

都市部では当日や翌日に薬が届くのが当たり前。でも離島では、基本的に船便で薬が運ばれてきます。

鹿児島からの船便ルートはこんな感じです。

鹿児島 → 喜界 → 奄美大島 → 徳之島 → 沖永良部 → 与論 → 沖縄

発注しても、すぐには薬が届きません。基本は翌日納品。

緊急に薬が必要な時は航空便を使います。奄美大島便(1日1便)か鹿児島便(1日3便)の飛行機出発1時間前までに薬を預ければ、なんとか届けてもらえます。または隣の与論病院に午前中に連絡すれば、その日のうちに借りることもできました。


年末年始の「薬が入ってこない」危機

離島勤務で最も緊張した経験のひとつを話します。

2010年12月30日のこと。

この日、来月分の薬がまとめて大量に入ってくる予定でした。

しかし——強風波浪で、船も飛行機も欠航。

薬が全く入ってこなかったのです。

そして翌31日も。1月1日も。2日も。

2011年1月3日まで、ずっと薬が入ってこない状態が続きました。

病院の薬は欠品の連続。抗生剤も、循環器系の薬も、どんどん無くなっていく。治療の選択肢がどんどん狭まっていく——。

この時、島に薬剤師は自分一人だけでした。

「代わりに使える薬はないか」「この患者さんにはどう対応するか」——ひたすら考え続けました。

これは、災害医療の現場に近い状況だったと思います。


麻薬が届くのに3〜5日かかる

もうひとつ、離島ならではの苦労が「麻薬の購入」です。

通常、麻薬は書類のやり取りが必要です。離島の場合の流れはこうです。

  1. 病院から麻薬譲受書を医薬品卸に送る
  2. 翌日か翌々日に卸に届く→麻薬現品と譲渡書を送ってもらう
  3. 翌日か翌々日に薬が届く

つまり、注文から現品到着まで3〜5日かかってしまいます。

「先に現品を送ってもらって、後から書類を送ればいいじゃないか」と何度思ったことか…。法律上できないのですが、離島でモルヒネが足りなくなる不安は、都市部の薬剤師には想像しにくいかもしれません。


実際に起きた「麻薬100箱事件」

麻薬管理で笑えない失敗談をひとつ。

あるターミナルの患者さんの治療で、塩酸モルヒネ注50mgが1日に40A(8箱)近く使われていた時期がありました。

3連休が来る。「連休中も足りるように」と100箱発注したところ——連休明け前に投与が中止になり、100箱(約67万円分)の在庫が残ってしまいました。

しかも麻薬は返品できない。

その後、他の患者さんへの投与で少しずつ使いながら、約2年かけてようやく8箱まで在庫を減らすことができました。

離島の薬品管理がいかに難しいか、伝わりますでしょうか。


台風が来たら食べ物も薬も入ってこない

台風接近時には、船も飛行機も欠航になります。

食べ物が入ってこない。薬も入ってこない。

スーパーから食材が消えるので、台風前は早めに買い込む。寮が浸水した時は病院に避難する。

「早め早めの在庫管理」は離島薬剤師の最大のスキルかもしれません。


もし薬が1週間入ってこなかったら?

「もし薬が1週間入ってこなかったら、あなたの病院はどうなりますか?」

都市部で働く薬剤師の方にも、一度真剣に考えてほしい問いです。

離島では、これが現実に起こりうることなのです。

この経験は、後に私が災害医療に携わる上での大きな土台になりました。


まとめ

  • 離島には医薬品の卸問屋がなく、基本は船便翌日納品
  • 悪天候で欠航が続くと薬が全く入ってこない
  • 麻薬の購入には3〜5日かかる
  • 台風前の早め在庫管理が離島薬剤師の必須スキル

次回は、離島でのオンコール業務のリアルをお届けします。


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離島勤務ってどうなの?沖永良部島2年間の記録① 

病院薬剤師の1日スケジュール 

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2026年6月4日木曜日

離島勤務って実際どうなの?沖永良部島で薬剤師として働いた2年間【離島医療シリーズ①】

 こんばんは、田浦マインドです。

今回から「離島医療シリーズ」として、私が沖永良部島で薬剤師として働いた2年間の経験を連続でお届けします。

「離島勤務って実際どんな感じ?」 「病院薬剤師が離島で働くってどういうこと?」

そんな疑問をお持ちの方に、リアルな体験談をたっぷりお伝えします。


なぜ離島へ行ったのか

大学時代に『Dr.コトー診療所』というドラマを観ました。

離島で一人、あらゆる患者さんと向き合い続ける医師の姿に、胸が熱くなりました。

「困っている人の力になりたい」——この気持ちが私の中に芽生えたのは、あのドラマがきっかけだったと思います。

2009年、私は鹿児島徳洲会病院からの転勤という形で、奄美大島の南に浮かぶ小さな島・沖永良部島(人口約14,000人)の病院へ赴任しました。


沖永良部島ってどこ?

鹿児島県の離島で、奄美大島と沖縄本島の間に位置します。

船で鹿児島から約20時間、飛行機で約1時間の場所です。

島には徳洲会グループの沖永良部徳洲会病院(132床)があり、島唯一の病院として島民の医療を一手に担っています。

「島に一つの病院」——この事実が、離島医療のすべてを象徴しています。


離島のイメージと現実のギャップ

赴任前、離島の病院に対していろいろなイメージを持っていました。

  • 紙カルテ?
  • 検査機器は揃っているのか?
  • 分包機や薬袋発行機などの設備はあるのか?
  • 医薬品の種類は少ないのでは?
  • 病棟業務なんてやっているのか?
  • 都市部との医療格差はどれくらいある?

実際に行ってみると——想像以上の医療環境がありました。

徳洲会グループは「医療が離島で完結すること」を目指しており、CT・MRIはもちろん、手術設備も整えています。最新の医療機器を導入し、経験豊かな医師・医療スタッフを配置することで、「離島でも都会と同じレベルの医療を」という姿勢を貫いていました。


離島医療の最大の特徴:断れない

離島医療で最も印象に残っていることは、「救急患者を断らない」 という文化です。

都市部では2017年、救急搬送で3回以上受け入れを断られた件数が約32万件(5.7%)にのぼりました。

しかし離島では、救急車のたらい回しなど起こりません。24時間・365日、夜間でも休日でも年末年始でも、全ての患者さんを断らずに受け入れています。

正直に言えば——島に病院が一つしかないから、断れないのです。救急隊も迷わずまっすぐ向かってくる。

「少し考えさせて」とも言えない。

でも、これこそが医療の原点だと、今は心から思っています。


離島で感じた3つの魅力

2年間を振り返って、離島医療には3つの大きな魅力があると感じています。

① 人が温かい

最初は奥手だった島の人も、一緒にお酒を飲めばすぐに友達。飲みニケーションの原点を感じることができます。

② 患者さんと生涯付き合っていける

離島では「退院=ゴール」ではありません。お母さんのお腹の中にいる時から出会い、生まれ、入院し、退院後も外来・在宅医療でずっと関わり続ける。いつの間にか、家族の一員のような気持ちになっていました。

③ 広い視野で働ける

大きな病院では薬剤師業務の一部を担当しますが、離島では「病院全体・島全体」を見渡しながら仕事ができます。島民の信頼に応えなければという責任感が、自然と強くなっていきます。


まとめ

離島医療は、地域医療の原点です。

島全体がひとつの家族のような温かさがあり、医療従事者としての醍醐味がぎっしり詰まっていました。

次回は、離島ならではの「薬の管理の苦労話」をリアルにお届けします。

お楽しみに!


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病院薬剤師の1日スケジュール

薬剤師になって良かったこと・大変なこと本音

薬剤師の話ブログ(専門情報)

2026年6月3日水曜日

病院薬剤師が考える『話し方の学校』|医療現場で活きる「伝わる力」とは?

 

「ちゃんと説明したのに伝わらない」と感じたことはありませんか?

患者さんに丁寧に説明したつもりなのに、あとで「聞いていません」と言われた。

医師へ提案したが、うまく意図が伝わらなかった。

新人指導で、一生懸命伝えても響いていない気がする。

講演会で話したけれど、「なんとなく盛り上がらなかった」と感じる。

医療現場では専門知識が重要ですが、それ以上に「伝える力」が必要になる場面があります。

そんな中、私が気になったのが、鴨頭嘉人さんの「話し方の学校」です。

今回は、公開情報などをもとに、「どのようなことが学べそうか」、そして「病院薬剤師としてどう活かせそうか」を整理してみたいと思います。

※本記事は公開情報や受講者発信等をもとに整理した内容であり、講座内容の完全再現ではありません。

「話し方の学校」とは?

「話し方の学校」は、講演家・YouTuberとして活動されている鴨頭嘉人さんが展開するコミュニケーション講座です。

単なる「上手に話すテクニック」ではなく、

「相手に伝わる」
「人が動く」
「相手との信頼関係を築く」

というコミュニケーションを重視している印象があります。

特に、

  • 相手目線
  • 聴く力
  • 感情が伝わる話し方
  • 人前でのスピーチ
  • 承認(相手を認める)
  • 自己表現

などが軸になっているようです。

これらは、実は医療現場とかなり相性が良いテーマではないかと感じます。

① 相手目線で話す|患者説明で最も重要

医療者はつい「正確に説明する」ことに集中しがちです。

しかし患者さんが求めているのは、必ずしも専門的に正確な説明だけではありません。

「自分に関係ある話として理解できるか」

が重要です。

例えば糖尿病指導。

【医療者目線】

「HbA1cが高いですね」

【患者目線】

「今の状態が続くと、将来しびれや目の病気につながる可能性があります」

後者の方が、“自分ごと”として理解しやすくなります。

これは薬剤指導でも非常に重要です。

“正しい説明”だけでなく、“相手に伝わる説明”が必要なのだと思います。

② 聴く力|実は話し方以上に重要かもしれない

「話し方の学校」という名前ですが、実は“聴く力”も重要テーマだと言われています。

医療現場でも、

「患者さんが何を心配しているか」

を聴けているかどうかで、関係性は大きく変わります。

たとえば、

「薬を飲み忘れないでください」

と伝える前に、

「何か飲みにくい理由ありますか?」

と聞く。

すると、

「副作用が怖くて…」
「仕事中に飲めなくて…」

という本音が出てくることがあります。

つまり、“伝える”前に“聴く”。

これが結果的に良いコミュニケーションにつながるのだと思います。

③ 感情が伝わる話し方|講演・院内教育で差が出る

私は院内講義や市民講演を担当する機会がありますが、感じることがあります。

「正しい内容だけでは、人は動かない」

ということです。

スライドが良くても、内容が正しくても、

声の抑揚
表情
熱量
間(ま)

で伝わり方が変わります。

例えば帯状疱疹ワクチン講演。

数字だけ並べるより、

「実際に帯状疱疹後神経痛で苦しまれる患者さんを見てきました」

というストーリーが入ると、伝わり方は変わります。

知識だけではなく、「感情が伝わる話し方」も重要なのだと感じます。

④ 承認する力|心理的安全性にもつながる

個人的に最も医療現場に重要だと思ったのが「承認」です。

新人教育でも、

×「なんでできないの?」

ではなく、

○「確認して動こうとしていたのは良かったね」

と、まず認める。

すると相談しやすくなります。

これは心理的安全性にもつながります。

“安心して話せる職場”は、ただ優しいだけではありません。

「自分の発言を受け止めてもらえる」

という安心感があります。

コミュニケーションは、話す技術だけではなく、相手を認める姿勢も重要なのだと思います。

⑤ 病院薬剤師にこそ「話す力」が必要

病院薬剤師の仕事は、

「薬を出す仕事」

だけではありません。

  • 患者説明
  • 医師への処方提案
  • 多職種連携
  • 後輩指導
  • 学会発表
  • 市民講演
  • 医療安全活動

など、“話す仕事”が非常に多い職種です。

知識量だけで差がつく時代ではなく、

「どう伝えるか」

がますます重要になるのではないでしょうか。

まとめ|話し方は才能ではなくスキル

「話すのが得意な人は才能がある」

そう思っていました。

しかし、話し方は“センス”だけではなく、“技術”として学べる部分が多いように感じます。

医療現場では、正しさだけでは人は動きません。

相手に伝わり、安心感を与え、行動につながるコミュニケーション。

それがこれからの医療者に求められる力なのかもしれません。

皆さんも一度、自分の「話し方」を見直してみませんか?