2021年に日本でも登場したCGRP関連製剤は、片頭痛治療の歴史を変えた革命的な薬剤です。今回はそのメカニズム・種類・効果・薬剤師としての関わり方を解説します。
CGRPとは何か
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド:Calcitonin Gene-Related Peptide)は、片頭痛の発症に深く関わる神経ペプチドです。
片頭痛発作が起きる時、三叉神経終末からCGRPが大量に放出されます。
CGRPの作用:
- 脳血管の拡張
- 神経炎症の促進
- 痛覚過敏の増強
片頭痛患者さんでは、発作時にCGRPの血中濃度が著しく上昇し、発作が終わると元の濃度に戻ることが確認されています。
「CGRPをブロックすれば片頭痛を予防できる」——これがCGRP関連製剤の発想です。
CGRP関連製剤の種類
CGRP関連製剤には2種類のアプローチがあります。
① 抗CGRP抗体製剤(CGRPそのものをブロック)
ガルカネズマブ(エムガリティ®) 1ヶ月に1回の皮下注射。初回のみ2本注射(240mg)、2回目以降は1本(120mg)。自己注射可能なオートインジェクターあり。
フレマネズマブ(アジョビ®) 1ヶ月に1回または3ヶ月に1回の皮下注射。3ヶ月に1回の選択肢があるのが特徴。自己注射可能。
② 抗CGRP受容体抗体製剤(CGRP受容体をブロック)
エレヌマブ(アイモビッグ®) 1ヶ月に1回の皮下注射。自己注射可能なオートインジェクターあり。
CGRP関連製剤の驚くべき効果
臨床試験での主要な結果:
- 約50%の患者さんで月の頭痛日数が半減
- 約10〜20%の患者さんで頭痛が完全に消失
- 既存の予防薬(プロプラノロール・バルプロ酸など)が無効だった患者さんにも有効
既存の予防薬との大きな違い
従来の予防薬(プロプラノロール・バルプロ酸・アミトリプチリンなど)は、もともと別の疾患(高血圧・てんかん・うつ)のために開発された薬です。片頭痛予防への効果は副次的に発見されたものです。
そのため:
- 片頭痛以外の副作用(眠気・体重増加・認知機能低下など)が問題になることがある
- 片頭痛の発症機序そのものにはアプローチしていない
一方、CGRP関連製剤は片頭痛の発症機序(CGRPの過剰産生)を直接ターゲットにした、片頭痛のために開発された初めての薬剤です。
副作用と注意点
CGRP関連製剤は比較的安全性が高い薬剤ですが、注意点があります。
主な副作用:
- 注射部位反応(発赤・腫脹・痛み):最も多い
- 便秘(CGRPが消化管にも関与しているため)
- アレルギー反応(まれ)
使用上の注意:
- 心血管疾患がある場合は慎重に(CGRPは心保護作用もあるため、完全遮断のリスクについて検討が必要)
- 妊娠・授乳中は原則禁忌
CGRP関連製剤の保険適用条件
保険適用は既存の予防薬(2剤以上)で効果不十分または副作用で継続困難な場合が基本的な条件です(施設・時期により異なりますので最新の処方情報をご確認ください)。
薬剤師としての関わり方
自己注射の指導
CGRP関連製剤の多くはオートインジェクター(自動注射器)で自己投与できます。
患者さんへの指導ポイント:
- 保管方法(冷蔵保存・2〜8℃。凍結厳禁)
- 注射部位(腹部・大腿・上腕の皮下)
- 注射前の準備(冷蔵庫から出して30分室温に戻す)
- 注射方法(皮膚をつまんで90度で刺す)
- 使用済みの廃棄方法(シャープスコンテナへ)
効果の評価とモニタリング
「3〜6ヶ月後に効果を評価する」という前提で開始されることが多いです。
服薬指導での確認ポイント:
- 頭痛日数の変化
- 頭痛の強さの変化
- 急性期治療薬の使用回数の変化
- 日常生活への影響の変化
「頭痛ダイアリーをつけていますか?」と確認することで、効果評価をサポートできます。
予防治療は「連続」でなくても良い
CGRP関連製剤を含む予防治療は、「一生飲み続けなければいけない」わけではありません。
- 効果が十分に得られれば、一時的に中断することもある
- 特定の時期(梅雨・受験期・繁忙期)だけ使うという選択もある
「結婚式がある3ヶ月前から始めて、終わったら様子を見る」という使い方も実際にあります。
まとめ
- CGRPは片頭痛発作時に大量放出される神経ペプチド
- CGRP関連製剤は①抗CGRP抗体(ガルカネズマブ・フレマネズマブ)②抗CGRP受容体抗体(エレヌマブ)
- 約50%の患者で頭痛が半減、約10〜20%で消失という驚異的な効果
- 片頭痛のために開発された初の薬剤。既存の予防薬と根本的に異なる
- 薬剤師は自己注射指導・効果モニタリング・頭痛ダイアリー支援で貢献
- 予防治療は必要な時期に絞って行うことも可能
次回は「既存の予防薬:降圧薬・抗てんかん薬・漢方薬の使い分け」を解説します。
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