こんばんは、田浦マインドです。
バイタルサインは「生命の兆候」です。体温・血圧・脈拍・呼吸数・SpO2の5つを正しく読むことで、患者の緊急度と状態が見えてきます。今回は薬剤師が知っておくべきバイタルサインの読み方を解説します。
バイタルサインとは
バイタルサイン(Vital Signs)とは、生命活動を示す基本的な生体情報です。
- 体温(BT:Body Temperature)
- 血圧(BP:Blood Pressure)
- 脈拍(HR:Heart Rate)
- 呼吸数(RR:Respiratory Rate)
- SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)
これらは「臓器が耐えられているか」を示すサインです。数字の組み合わせを読むことが重要です。
体温(BT)
正常値:36.0〜37.4℃
- 38℃以上:感染・炎症を積極的に疑う
- 37.5℃以上:一般的に「発熱」と判断
- 低体温(35℃未満)も危険:敗血症・甲状腺機能低下・低栄養
薬剤師が注目する点:
薬剤熱(drug fever)の可能性。薬剤開始から1〜3週間後に発熱が出現し、感染症症状が改善しているのに熱が続く場合は薬剤熱を疑います。原因薬を中止すると48〜72時間で解熱します。
代表的な薬剤熱の原因薬:β-ラクタム系抗菌薬、抗てんかん薬、抗結核薬など。
血圧(BP)
正常値:収縮期120mmHg未満 / 拡張期80mmHg未満
- 180/120mmHg以上:高血圧緊急症の可能性
- 低血圧+頻脈:ショックのサイン(要緊急対応)
- 高血圧治療中で低血圧:降圧薬の過量投与を疑う
薬剤師が注目する点:
降圧薬の開始後・増量後の血圧変化を継続的に確認することが重要です。「目標血圧に達しているか」「過度な降圧はないか」を評価します。
脈拍(HR)
正常値:60〜100回/分
- 100回/分以上(頻脈):発熱・貧血・心不全・脱水・疼痛・甲状腺機能亢進症など
- 60回/分未満(徐脈):β遮断薬の副作用・房室ブロック・低体温
- リズムの不整(不整脈)にも注意
薬剤師が注目する点:
ジゴキシンやβ遮断薬服用中の患者では徐脈のリスクがあります。「脈が遅くなった」という訴えは要注意です。
呼吸数(RR)
正常値:12〜20回/分
- 20回/分以上(頻呼吸):肺疾患・心不全・敗血症・代謝性アシドーシスなど
- 12回/分未満(徐呼吸):オピオイドの副作用など
重要なポイント:
呼吸数は最も見落とされやすいバイタルサインです。「なんとなく呼吸がいつもより速い」という患者さんの状態変化に気づくことが重要です。
SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)
正常値:96〜100%
- 94%以下:酸素投与を検討
- 90%以下:緊急。早期の酸素投与が必要
薬剤師が注目する点:
吸入薬(COPD・喘息)を使用している患者のSpO2は定期的に確認する対象です。COPDの患者では基礎値が低い(92〜93%台)場合があるため、「その患者さんの普段の値」と比較することが重要です。
バイタルサインの組み合わせで読む
個々のバイタルサインだけでなく、「組み合わせ」で読むことが重要です。
ショックのサイン(ABCDE) 低血圧 + 頻脈 + 頻呼吸 + 意識変容 + SpO2低下
敗血症を疑う:qSOFAスコア
- 呼吸数22回/分以上
- 収縮期血圧100mmHg以下
- 意識変容
このうち2項目以上に該当すれば敗血症を疑います。
実践例:78歳女性のバイタル
体温38.8℃ / 血圧88/52mmHg / 脈拍118回/分 / 呼吸数26回/分 / SpO2 94%
→ 3点警告(低血圧+頻脈+頻呼吸)が揃っています。
qSOFAは呼吸数26(≥22)・収縮期血圧88(≤100)で2点。敗血症を強く疑う緊急状態です。
この患者さんが発熱・排尿痛もあれば「尿路感染症→敗血症(ウロセプシス)」を最優先に考えます。
薬剤師がフィジカルアセスメントをする目的
薬剤師のフィジカルアセスメントは「薬剤の効果・副作用を評価するため」から始まりましたが、災害時などには「薬剤師の判断で処方が可能かどうか」を判断するためのトリアージ手段にもなります。
日常業務でも「血圧の薬を飲み始めてから、立った時にクラクラする」という患者さんの訴えには、血圧を測って確認する習慣が重要です。
まとめ
- 体温:38℃以上で感染疑い。薬剤熱も念頭に
- 血圧:180/120以上は要注意。低血圧+頻脈はショックのサイン
- 脈拍:100以上の頻脈・60未満の徐脈・不整脈に注意
- 呼吸数:最も見落とされやすいバイタルサイン
- SpO2:94%以下は酸素投与を検討
- バイタルサインは「組み合わせ」で読む
次回は典型症候①「胸痛の鑑別診断:緊急度マップで命を守る」を解説します。
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