こんばんは、田浦マインドです。
「様子がおかしい」「話がかみ合わない」——意識障害は命に関わる緊急事態です。今回は意識障害の原因を系統的に整理できる「AIUEO TIPS」と、薬剤師の対応について解説します。
意識障害を見たらまず何をするか
意識障害の患者さんを見たら、最初にすることがあります。
「まず血糖を測れ」
低血糖は意識障害の最も重要な原因のひとつで、治療しないと不可逆的な脳障害になります。血糖測定は数秒でできる検査です。
AIUEO TIPSとは
AIUEO TIPSは、意識障害の原因を系統的に覚えるための頭字語です。
| 文字 | 意味 | 代表的な疾患・状態 |
|---|---|---|
| A | Alcohol/Acidosis | アルコール中毒・代謝性アシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシスなど) |
| I | Insulin(血糖異常) | 低血糖(最重要)・高血糖・糖尿病性ケトアシドーシス |
| U | Uremia(尿毒症) | 腎不全による毒素蓄積 |
| E | Encephalopathy/Epilepsy | 肝性脳症・高血圧性脳症・脳炎・てんかん発作後 |
| O | Overdose/Oxygen不足 | 薬物過量・一酸化炭素中毒・低酸素血症 |
| T | Trauma/Temperature | 頭部外傷・低体温症・熱中症 |
| I | Infection(感染) | 敗血症性脳症・髄膜炎・脳炎 |
| P | Psychiatric/Poison | 統合失調症・中毒(農薬・有機リン) |
| S | Stroke/Space(脳卒中・脳腫瘍) | 脳梗塞・脳出血・くも膜下出血 |
薬剤師が特に注目すべき原因
I(Insulin:低血糖)
低血糖は薬剤師にとって最重要の意識障害原因です。
低血糖の三徴:意識障害・冷汗・頻脈(交感神経症状)
低血糖を起こしやすい薬剤:
- スルホニル尿素薬(SU薬):グリメピリド・グリクラジドなど
- インスリン製剤
- 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
SU薬+食事摂取不足→低血糖のパターンを必ず意識してください。
高齢者・腎機能低下患者ではSU薬の蓄積により低血糖リスクが高まります。
O(Overdose:薬物過量)
薬剤師が気づきやすいポイントです。
- ベンゾジアゼピン系薬の過量→鎮静・意識障害
- オピオイドの過量→意識障害+呼吸抑制
- 抗コリン薬の過量→興奮・混乱
患者さんが複数の病院を受診していて、同効薬が重複していないか確認することも重要です。
E(Encephalopathy:肝性脳症)
肝硬変患者での意識障害は肝性脳症を疑います。
薬剤師が注意すべき点:便秘が肝性脳症を悪化させます。ラクツロースなど下剤を適切に使用して排便をコントロールすることが重要です。
実践例:88歳女性「様子がおかしい」
朝食後1時間で「顔面蒼白、冷や汗、ソワソワしている」状態。
既往歴:2型糖尿病、高血圧
服用薬:グリメピリド1mg・メトホルミン500mg・シタグリプチン50mg・アムロジピン5mgなど
バイタル:体温35.6℃・血圧180/98mmHg・心拍数98回/分
AIUEO TIPSで考える:
I(Insulin)→ SU薬(グリメピリド)+食事後1時間→低血糖の典型パターン!
低血糖三徴:顔面蒼白(青白い)・冷や汗・ソワソワ(頻脈による交感神経症状)が全て揃っています。
薬剤師の対応:
- 血糖測定(まず血糖を測れ)
- 意識があれば砂糖・ジュースを摂取させる
- 医師・看護師に「SU薬による低血糖の可能性があります」と報告
- 直近のHbA1cも確認(5.5%など低値なら低血糖継続のリスクが高い)
薬剤師として低血糖を予防する
低血糖は「予防」が最重要です。
リスクが高い状況:
- 高齢者(腎機能低下によりSU薬が蓄積)
- 食事量が少ない・食事を抜く場面
- 腎機能が低下している患者
- SU薬+インスリンの組み合わせ
- 飲酒(アルコールは糖新生を抑制)
薬剤師の介入ポイント:
- 「シックデイ(体調不良の日)の対応」を必ず説明する
- 食事が摂れない時はSU薬・インスリンの調整が必要であることを患者・家族に指導
- 低血糖症状と対処法(糖分を摂る)を繰り返し指導する
意識障害の緊急度を判断:JCSスケール
日本では意識レベルの評価にJCS(Japan Coma Scale)がよく使われます。
| 数値 | 状態 |
|---|---|
| 0 | 意識清明 |
| 1 | 今ひとつはっきりしない |
| 2 | 見当識障害(日付・場所・人がわからない) |
| 3 | 名前・生年月日が言えない |
| 10 | 呼びかけで容易に開眼する |
| 20 | 大きな声・身体の揺さぶりで開眼する |
| 30 | 痛み刺激でかろうじて開眼する |
| 100〜300 | 刺激でも開眼しない(100は手を動かす、300は全く動かない) |
まとめ
- 意識障害を見たら「まず血糖を測れ」
- AIUEO TIPS:A(アルコール・アシドーシス)・I(血糖異常)・U(尿毒症)・E(脳症・てんかん)・O(過量・低酸素)・T(外傷・体温)・I(感染)・P(精神・中毒)・S(脳卒中)
- 薬剤師が特に注目:I(低血糖)・O(薬物過量)・E(肝性脳症)
- SU薬+食事摂取不足→低血糖のパターンを必ず意識する
- 低血糖は「予防」が最重要。シックデイ指導を徹底する
次回は薬歴シリーズ最終回「ワンセンテンスサマリー:デキる薬剤師の情報伝達術」を解説します。
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