2026年8月6日木曜日

片頭痛患者の70%が未治療——社会と医療者の誤解が患者を苦しめる【片頭痛シリーズ③】

 「片頭痛って怠け病でしょ」「頭痛くらい我慢できる」——そんな社会の誤解が、片頭痛患者さんを二重に苦しめています。今回は片頭痛をめぐる社会的な問題と、薬剤師の役割を考えます。


衝撃の事実:片頭痛患者の約70%が未治療

片頭痛患者の約70%は受診せず、未治療だったり市販の鎮痛薬で対処しているという現実があります。

約12人に1人が片頭痛にかかっているにも関わらず、そのほとんどが適切な治療を受けていません。


なぜ受診しないのか

受診しない理由はいくつか考えられます。

「頭痛くらいで病院に行っていい」と思っていない 「頭痛で受診するのは大げさ」という罪悪感を持っている患者さんは多いです。

「市販の薬で何とかなっている」と思っている 市販の鎮痛薬(イブプロフェン・アセトアミノフェンなど)で対処できると思っている患者さんが多いのですが、実は使いすぎると「薬剤使用過多による頭痛(MOH)」になるリスクがあります(後述)。

「片頭痛」という病気があることを知らない 「こういう頭痛は私の体質だから仕方ない」と諦めている患者さんも多いです。

「治らない」と思っている 「病院に行っても治らない」という悲観から受診しない患者さんもいます。でも実際には、適切な治療でコントロールできる疾患です。


社会の誤解が患者を傷つける

片頭痛患者さんは、周囲の無理解に苦しんでいます。

職場での場面: 「また頭痛?さぼってるんじゃないの?」 「そんなに痛いなら鎮痛剤飲めばいいじゃない」

家庭での場面: 「気合が足りない」「弱い人間だ」

学校での場面: 「頭痛くらいで学校を休むなんて」


片頭痛が与える社会的・経済的な影響

WHOが世界の疾病負担を調査した「Global Burden of Disease」において、片頭痛は**「最も生活障害をもたらす疾患」のトップ10**に入っています。

日本での影響:

  • 仕事・学業のパフォーマンス低下
  • 欠勤・早退・外出の制限
  • 家事・育児への支障
  • QOL(生活の質)の著しい低下

「寝込みたいほど痛いのに、仕事を休めない」「大事な会議・イベントに参加できない」——こういった状況が繰り返されることで、ストレスが溜まり(ストレスは片頭痛の最大の増悪因子)、頭痛がさらに悪化するという悪循環に陥ります。


片頭痛の増悪因子第1位はストレス

片頭痛を悪化させる一番の要因がストレスです。

「片頭痛がある → 仕事・学業・人間関係に支障が出る → 周囲から理解されない → ストレスが溜まる → 頭痛がさらに増悪」

この負のスパイラルが、片頭痛患者さんの生活を蝕んでいきます。

頭痛の頻度や強さがどんどん悪化して、週に何日も頭痛が起きることで、外出することに躊躇するようになったり、仕事が思うようにできず、自己嫌悪に陥ることも……。


医療者の誤解も問題

「社会だけでなく、医療者の片頭痛に対する理解もまだまだ不十分」——これが現実です。

「頭痛で来院→とりあえず鎮痛薬を処方」という対応だけでは不十分です。

本来必要なこと:

  • 正確な診断(片頭痛なのか、緊張型頭痛なのか)
  • 急性期治療薬の適切な選択(トリプタンが必要か、NSAIDsで十分か)
  • 予防薬の適応評価(月に2回以上の発作→予防薬の検討)
  • MOH(薬剤使用過多による頭痛)のリスク評価
  • 患者への疾患教育

片頭痛は「治療可能な疾患」

「頭痛は治らない病気だと思っていた」という患者さんは多いです。でも違います。

片頭痛は治療可能な疾患です。

適切な治療によって:

  • 発作の頻度が大幅に減る
  • 発作が来ても短時間で回復できる
  • 予防治療で発作そのものを防ぐことができる
  • 2021年以降はCGRP関連製剤という革新的な新薬もある

「薬で治療できる疾患なのに、我慢している人がたくさんいる」——これを変えていくのが、薬剤師を含む医療従事者の役割です。


薬剤師にできること

薬剤師は「疾患啓発」のフロントラインに立てます。

① OTC薬を販売する際の声かけ 「鎮痛薬を月に10日以上使っていませんか?」「もし月に2回以上頭痛があれば、頭痛外来への受診を検討してみてください」

② 処方箋受付時の確認 片頭痛の薬が処方されている患者さんへの服薬指導で、現在の頭痛の状況・服薬頻度・日常生活への影響を確認する。

③ 患者の話を最後まで聴く 「頭痛くらい大したことない」ではなく、患者さんの苦労を共感的に受け止める。「毎日大変でしたね」という一言が信頼関係を作ります。


まとめ

  • 片頭痛患者の約70%が未治療または市販薬のみで対処している
  • 受診しない理由:「大げさ」という罪悪感・知識不足・諦め
  • 社会・職場・医療者の誤解が患者さんを二重に苦しめる
  • ストレスは増悪因子第1位→負のスパイラルに陥りやすい
  • 片頭痛は治療可能な疾患。薬剤師は疾患啓発の最前線に立てる

次回は「頭痛治療の2本立て:急性期治療薬と予防薬の考え方」を解説します。


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片頭痛の診断基準② 

hospharブログ(病院薬剤師の専門情報)

2026年8月5日水曜日

片頭痛の診断基準:ICHD-3で「本物の片頭痛」を見極める【片頭痛シリーズ②】

 「私の頭痛、本当に片頭痛?」——この疑問、実は多くの患者さんが持っています。今回は国際頭痛分類第3版(ICHD-3)の診断基準と、危険な頭痛を除外するための考え方を解説します。


なぜ診断基準を知る必要があるのか

片頭痛の治療は「正確な診断」から始まります。

「頭が痛い=片頭痛」ではありません。頭痛には緊張型頭痛・群発頭痛・二次性頭痛(脳腫瘍・くも膜下出血など)など様々な種類があります。

特に**二次性頭痛(原因疾患がある頭痛)**を見逃すと命に関わります。片頭痛の診断は、危険な頭痛を除外してから行います。


「危険な頭痛」を見分けるレッドフラッグサイン

以下のサインがある場合は、片頭痛ではなく緊急の評価が必要です。

SNOOP4(スヌープ4)

文字サイン示唆する疾患
SSystemic symptoms(全身症状):発熱・体重減少感染・悪性疾患
NNeurological symptoms(神経症状):麻痺・意識障害脳梗塞・脳腫瘍
OOnset(発症様式):突然始まる「人生最悪の頭痛」くも膜下出血
OOlder age(高齢発症):50歳以降の初発頭痛脳腫瘍・側頭動脈炎
PProgressive(進行性):増悪する頭痛脳腫瘍・慢性硬膜下血腫
PPositional(体位性):体位で変化する頭痛低髄液圧症候群
PPrecipitated(誘発):咳・運動・性行為で誘発頭蓋内圧亢進
PPapilledema(うっ血乳頭):視神経乳頭浮腫頭蓋内圧亢進

特に「今まで感じたことのない頭痛・突然始まった激しい頭痛」はくも膜下出血の可能性があり、救急受診が必要です。


ICHD-3「前兆のない片頭痛」の診断基準

国際頭痛分類第3版(ICHD-3、2018年)による診断基準です。

A. B〜Dを満たす頭痛発作が5回以上ある

B. 頭痛発作の持続時間は4〜72時間 (未治療、または治療が無効の場合)

C. 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす ① 片側性 ② 拍動性 ③ 中等度〜重度の頭痛 ④ 日常的な動作(歩行・階段昇降)により頭痛が増悪する、またはそのために避ける

D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす ① 悪心または嘔吐(あるいはその両方) ② 光過敏および音過敏

E. ほかに最適なICHD-3の診断がない


診断基準をわかりやすく解説

「5回以上」が必要な理由

1〜2回の頭痛では偶発的な可能性があるため、診断には5回以上の発作が必要です。

「4〜72時間」の意味

短い(4時間未満)または非常に長い(72時間超)頭痛は片頭痛の典型から外れる可能性があります。

ただし、治療が効いた場合は4時間未満で治まることもあります。「未治療または治療が無効の場合」という条件がついているのはそのためです。

Cの「2項目以上」を具体的に考える

例)拍動性+中等度以上の強さ → 2項目満たす → C条件クリア 例)片側性+動作で増悪 → 2項目満たす → C条件クリア

Dの「悪心または光過敏・音過敏」

片頭痛の特徴的な随伴症状です。「ズキズキするし、吐き気もある」「光がまぶしくてカーテンを閉めたくなる」がヒントになります。


緊張型頭痛との鑑別

最も多く混同されるのが緊張型頭痛(肩こり・首こりに関連した締め付ける頭痛)との鑑別です。

特徴片頭痛緊張型頭痛
痛みの性質ズキズキ(拍動性)ギュー(締め付け・圧迫感)
強さ中等度〜重度軽度〜中等度
部位片側(または両側)両側が多い
動作による影響増悪する増悪しない
悪心・嘔吐あることが多い通常ない
光・音過敏あることが多い通常ない

群発頭痛との鑑別

群発頭痛も片側性で強い頭痛ですが、全く異なります。

特徴片頭痛群発頭痛
部位片側(または両側)片側・眼周囲・眼窩
持続時間4〜72時間15〜180分(短い)
頻度月数回程度1〜8回/日(群発期)
自律神経症状ほぼなし結膜充血・流涙・鼻閉
行動安静にしていたい落ち着きがなく歩き回る
性別女性に多い男性に多い

片頭痛の診断は医師の役割

診断基準を知っておくことは、薬剤師として「この患者さんは受診が必要かどうか」を判断するのに役立ちます。

しかし最終的な診断は医師の仕事です。

「市販の鎮痛薬を飲み続けているが効かない」「頭痛がひどくて仕事・学校を休むことがある」「月に何度も頭痛がある」——こういった患者さんには、頭痛専門外来(神経内科・脳神経外科・頭痛外来)への受診を勧めることが薬剤師の重要な役割です。


まとめ

  • 頭痛診断の第一歩は危険な二次性頭痛の除外(SNOOP4)
  • 「今まで最悪の頭痛・突然始まった激しい頭痛」→ 救急へ
  • ICHD-3診断基準:5回以上の発作 × C条件2項目以上 × D条件1項目以上
  • 緊張型頭痛との鑑別:ズキズキ(片頭痛)vs ギュー(緊張型)
  • 市販薬が効かない・月に複数回→ 受診勧奨が薬剤師の役割

次回は「片頭痛患者の70%が未治療——社会の誤解と現実」を解説します。


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片頭痛とは何か① 

hospharブログ(病院薬剤師の専門情報)

2026年8月4日火曜日

片頭痛とは何か?薬剤師が正しく知るための基礎知識【片頭痛シリーズ①】

 「頭痛くらいで大げさ」「寝れば治る」——そんなふうに思われがちな片頭痛ですが、実は日常生活を大きく制限する疾患です。今回から片頭痛シリーズをお届けします。薬剤師として片頭痛を正しく理解し、患者さんの役に立てるようになりましょう。


片頭痛という名前の誤解

「片頭痛」という名称は頭の片側が痛むことに由来しますが、実際には約4割近くの患者さんが両側性の頭痛を経験しています。

「片頭痛=片側だけ痛い頭痛」ではありません。「片側のこともあるが、両側のこともある」という理解が正確です。


片頭痛の有病率

日本では成人の約8.4%が片頭痛にかかっていると報告されています(疑い例を含む)。

約12人に1人という計算になります。これは決して珍しい疾患ではありません。

特徴的なのは、女性に多いということ。一般的に男性の約3倍程度、女性に多く見られます。理由として女性ホルモン(エストロゲン)との関連が考えられており、月経周期に伴い片頭痛が悪化する「月経関連片頭痛」も知られています。


片頭痛の特徴的な症状

片頭痛には以下の特徴があります。

頭痛の特徴

  • 発作的に起こり、4〜72時間持続する
  • 片側性(または両側性)のズキズキと脈打つような拍動性の痛み
  • 中等度〜重度の強さ(「寝込みたい」レベル)
  • 日常的な動作(歩行・階段昇降)により増悪する

「頭が痛いけど、歩いたら余計痛くなった」——これが片頭痛の典型的なパターンです。

随伴症状

  • 悪心(吐き気)・嘔吐
  • 光過敏:普段は気にならない光がまぶしく不快
  • 音過敏:普段は気にならない音が不快
  • においに対する過敏(嗅覚過敏)

「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」

片頭痛は大きく2種類に分類されます。

前兆のない片頭痛(最多) 特別な予告症状なく頭痛が始まります。

前兆のある片頭痛 頭痛より前に前兆症状が現れます。

前兆で最も多いのは**視覚性前兆(閃輝暗点)**です。

閃輝暗点(せんきあんてん)とは:視野の一部にキラキラした光・ギザギザした光の輪が見え、やがてそれが拡大して視野の一部が欠けたように見える症状です。通常は20〜30分で消え、その後に頭痛が始まります。


予兆・前兆・頭痛・回復期の4段階

片頭痛の発作は4段階で推移します。

① 予兆期(数時間〜1日前) 頭痛前の何となくした予感。「なんか今日は頭痛になりそう」という感覚。眠気・気分の変調・食欲の変化などが現れます。

② 前兆期(頭痛の直前〜最大60分) 閃輝暗点などの視覚症状・手足のしびれ・言語障害など。通常60分以内に消えます。

③ 頭痛期(4〜72時間) 本格的な片頭痛の発作。拍動性の痛み・悪心・光音過敏が続きます。

④ 回復期(数時間〜1日) 頭痛が改善した後も、倦怠感・集中力低下・食欲不振などが残ることがあります。


片頭痛の増悪因子

片頭痛を引き起こすトリガー(増悪因子)があります。

第1位:ストレス(最も多い)

その他:

  • 月経・ホルモン変動
  • 睡眠の変化(睡眠不足・寝すぎ)
  • 天気・気圧の変化
  • 空腹・脱水
  • 光・音・においの強い刺激
  • アルコール(特に赤ワイン)
  • チョコレート・チーズ・加工食品

「雨の日に頭痛がひどくなる」という方が多いのは、気圧低下が関係していると考えられています。


片頭痛は脳の疾患

片頭痛は「ちょっとした頭痛」ではなく、脳の機能的な異常による神経疾患です。

三叉神経血管説が有力とされており、三叉神経が刺激されてCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチドが放出され、神経炎症と血管拡張が起きることで痛みが生じると考えられています。

このCGRPこそが、後述する新世代の片頭痛予防薬(CGRP関連製剤)のターゲットになっています。


まとめ

  • 片頭痛は成人の約8.4%(約12人に1人)。女性に多い
  • 「片頭痛」は片側とは限らない。4割近くは両側性
  • 特徴:拍動性の痛み・4〜72時間持続・動作で増悪・悪心・光音過敏
  • 前兆のある片頭痛では閃輝暗点が代表的な前兆
  • 発作は予兆→前兆→頭痛→回復期の4段階
  • 増悪因子第1位はストレス
  • 片頭痛の発症機序にはCGRPが関与

次回は「片頭痛の診断基準:ICHD-3で本物の片頭痛を見極める」を解説します。


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hospharブログ(病院薬剤師の専門情報) 

田浦マインドのパーソナルブログ

2026年8月3日月曜日

薬剤師の苦労・やりがい・魅力:22年間働いて感じたこと【薬剤師のお仕事シリーズ⑩・完結】

 薬剤師のお仕事シリーズ最終回は「本音」をお伝えします。22年間病院薬剤師として働いてきた私が感じてきた「苦労」と「やりがい」「魅力」を正直にお届けします。


薬剤師の3つの苦労

① 薬の種類がどんどん増えて覚えられない

医薬品は毎年新しいものが登場します。新しい作用機序の薬・ジェネリック医薬品・バイオ医薬品……「全部覚えないといけないの?」と思うほどの量です。

私が薬剤師になった2005年当時と比べても、薬の数は格段に増えました。医薬品の数は国内だけで数万品目以上。全部を暗記するのは不可能なので、「調べ方を知る」「信頼できる情報源にアクセスする」スキルが重要です。

継続的な勉強は薬剤師の宿命です。これが苦労でもあり、成長でもあります。

② いろんな患者さんに対応するのが大変

患者さんは一人ひとり全く違います。

  • 薬の説明を素直に聞いてくれる患者さん
  • 「こんな薬は飲みたくない」と拒否する患者さん
  • 「先生に聞いてきてくれ」と怒る患者さん
  • 認知症で説明が届かない患者さん
  • 言葉の壁がある外国人の患者さん

一つの対応法がすべての患者さんに通じることはありません。それぞれの患者さんに合わせて柔軟に対応するコミュニケーション力が求められます。これが大変でもあり、やりがいでもあります。

③ 他の医療従事者との関係構築が大変

医師・看護師・管理栄養士・理学療法士……多くの職種と連携する病院薬剤師にとって、人間関係の構築は永遠の課題です。

「あの先生は処方提案を受け入れてくれないな」「あの看護師さんとはうまくコミュニケーションが取れない」という悩みは、どの薬剤師でも経験します。

だからこそ私はコーチング・アンガーマネジメント・コミュニケーションスキルを学び続けてきました。


薬剤師の3つのやりがい

① 知識が増え続ける

新しい薬・新しい治療法・新しい研究結果——薬剤師として働いていると、常に最新の医療情報を学び続けられます。

「これが役立ったのか!」という瞬間の知的興奮は、何年経っても色褪せません。「一生勉強できる仕事」です。

② 患者さんに合わせた服薬指導で喜んでもらえる

「先生に聞けなかったことをあなたに聞けてよかった」 「この薬のせいで調子が悪かったことを教えてくれてありがとう」 「あなたがいてくれて安心して退院できました」

こういった言葉が、薬剤師としての原動力です。薬のプロとして患者さんの治療を支えられている実感が持てます。

③ 医療チームの一員として連携できる

医師・看護師・栄養士などと一緒に患者さんの治療方針を議論する——これは病院薬剤師ならではの体験です。

自分の提案が採用され「薬剤師の視点があってよかった」と思ってもらえた時の達成感は格別です。


病院薬剤師の5つの魅力

① 他職種との関わりがあり、チーム医療に貢献できる 

② 医師とのコミュニケーションが多く、処方提案ができる 

③ 認定制度が充実しており、キャリアアップを目指せる 

④ カルテ・検査データを確認しながら高度な薬学的判断ができる 

⑤ 注射薬・抗がん剤など多種多様な医薬品を扱える


私が薬剤師であり続ける理由

22年間、離島・僻地・熊本地震・能登半島地震の現場……様々な場所で薬剤師として働いてきました。

離島の沖永良部島では「島内唯一の薬剤師」として、医師・看護師と密に連携しながら島の方々の健康を守りました。

熊本・能登の被災地では、「薬剤師が来てくれた」という安心感を現地の方々から感じました。

どんな場所でも「薬の専門家」として社会に貢献できる——これが薬剤師という仕事の最大の魅力だと思っています。


薬剤師を目指す方へ

小学校で授業をした時、最後に子どもたちにこう伝えました。

「薬剤師になることよりも大切なのは、なぜ薬剤師になりたいのかを自分で考えることです。人の役に立ちたい・科学が好き・医療に興味がある——どんな理由でもいい。その気持ちが、長い勉強を支えてくれます」

薬剤師は国家資格であり、社会的信用があり、一生使えるスキルを持てる職業です。一家に一人薬剤師がいれば、親戚・友人から「これって飲み合わせ大丈夫?」「この薬どういう意味?」と頼られます(笑)

「薬剤師って素晴らしい!」——22年経った今も、その思いは変わりません。


シリーズ全10記事おさらい

① 薬剤師ってどんな仕事?基本をわかりやすく解説 ② もし薬がなかったら?薬の大切さを考える ③ 薬剤師になるには?薬学部・国家試験の全貌 ④ 薬剤師の仕事内容:調剤・服薬指導・薬歴管理 ⑤ 調剤薬局・ドラッグストア薬剤師の違い ⑥ 病院薬剤師の仕事と魅力 ⑦ 在宅医療・学校薬剤師という働き方 ⑧ 製薬会社・化粧品・スポーツチームで働く薬剤師 ⑨ 公務員薬剤師(麻薬取締官・自衛隊・保健所・刑務所) ⑩ 薬剤師の苦労・やりがい・魅力まとめ(本記事)


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公務員薬剤師⑨ 

hospharブログ(専門情報)

2026年8月2日日曜日

公務員薬剤師とは?麻薬取締官・自衛隊・保健所・刑務所の仕事【薬剤師のお仕事シリーズ⑨】

 「薬剤師が公務員?」と思う方も多いかもしれません。実は薬剤師が活躍する公務員の仕事は複数あり、なかには麻薬の取り締まりや拳銃を持つ仕事まであります。今回は公務員薬剤師の世界を紹介します。


公務員薬剤師の種類

薬剤師として働ける公務員の仕事は大きく2種類あります。

  • 地方公務員薬剤師:都道府県・市町村に属する
  • 国家公務員薬剤師:国(厚生労働省など)に属する

地方公務員薬剤師

都道府県や市区町村で働く薬剤師です。

主な勤務先・業務内容

  • 保健所:環境・食品衛生の監視指導
  • 衛生研究所:研究・試験検査
  • 薬局・医薬品製造業者への立ち入り検査・指導
  • 県立病院などの医療機関での調剤・服薬業務
  • 消費生活支援センターでの苦情処理・相談

配属は選べない場合が多く、約3年ごとに各部署を異動するのが一般的です。薬剤師とは関係なさそうな行政の仕事をこなすこともあり、柔軟性が必要です。


保健所で働く薬剤師

保健所での薬剤師の仕事は3分野あります。

① 薬事衛生 医薬品の製造施設・薬局などに対し、品質・安全性確保のための許可・監視指導を行います。「この薬局は適切に薬を管理しているか?」を立ち入り検査でチェックします。

② 食品衛生 食品製造業者・飲食店などに対する衛生管理指導。食の安全を守ります。

③ 生活衛生 旅館・クリーニング店・美容院・銭湯など、衛生環境が必要な場所の管理指導。水道衛生・廃棄物衛生なども担当します。


国家公務員薬剤師(薬系技官)

厚生労働省などで働く国家公務員薬剤師を「薬系技官」と言います。

化学・生物・薬学などの専門知識を活かして、医薬品や食品・化学物質が人体に与える影響に着目した政策立案、安全な医療を届けるための仕組み作りに携わります。

法律・制度を作る側として社会全体に影響を与えられる、やりがいの大きい仕事です。


自衛隊の薬剤官

自衛隊の中で働く「薬剤官」という特殊な働き方があります。

仕事内容

  • 自衛隊病院での薬品の管理・調剤
  • 医療費の管理
  • 災害時における現地での医療活動

全国転勤があるハードな職場ですが、一般の薬剤師とは全く異なる経験ができます。

私自身、熊本地震・能登半島地震で災害派遣薬剤師として現地に赴いた経験があります。「災害医療に携わりたい」という志がある方には、自衛隊の薬剤官も有力な選択肢です。


麻薬取締官(マトリ)

薬剤師の公務員の仕事の中で最も特殊かつドラマチックなのが「麻薬取締官」です。

厚生労働省の職員として勤務し、不正麻薬の取り締まりや薬物の不正使用の捜査を行います。俗に「マトリ」と呼ばれ、テレビドラマにもなったことがあります。

仕事内容

  • 薬物犯罪の現場捜査
  • 情報収集・関係者への指導・監督
  • 不正薬物使用の防止活動
  • 薬物の分析・鑑定
  • 逮捕術・拳銃射撃訓練(身の危険を伴う業務のため)

麻薬取締官は国家公務員。拳銃を携帯することもあり、危険と隣り合わせの仕事ですが、「薬物犯罪から社会を守る」という使命感ある仕事です。


刑務所で働く薬剤師

少し特殊ですが、刑務所にも薬剤師がいます。

仕事内容

  • 受刑者の処方薬の調剤(服薬指導は基本的に行わない)
  • 健康管理・処方チェック

高齢者や精神疾患の受刑者が多いため、全ての薬に精通した高い専門性が求められます。「普通の薬局と変わらないようで、全く違う環境」という特殊な経験ができます。


公務員薬剤師のメリット

  • 安定した収入・身分保障
  • 残業が比較的少ない場合もある
  • 社会に幅広く関われる
  • ユニークなキャリアを積める

一方で「専門性の深掘りより、広い知識が求められる」「異動が多い」という面もあります。


まとめ

薬剤師として働ける公務員の仕事:

  • 地方公務員:保健所・衛生研究所・立ち入り検査・県立病院
  • 国家公務員(薬系技官):医薬品・食品の政策立案・制度作り
  • 自衛隊薬剤官:自衛隊病院の調剤・災害時医療
  • 麻薬取締官:不正麻薬の取り締まり・捜査(拳銃携帯あり)
  • 刑務所:受刑者の処方調剤・健康管理

次回はシリーズ最終回「薬剤師の苦労・やりがい・魅力まとめ」です。


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