2003年に日本初の生物学的製剤(インフリキシマブ)が登場して以来、RA治療は劇的に進歩しました。今回はTNF阻害薬3剤を徹底比較します。
TNF阻害薬とは
TNF-α(腫瘍壊死因子)は、RAの炎症を引き起こす最重要サイトカインの一つです。TNF阻害薬はこのTNF-αを中和またはそのシグナルを遮断することで、炎症を抑制します。
TNF阻害薬を使用すると帯状疱疹発生率は2〜3人/患者100人/年(JAK阻害薬の約9人/100人年より低い)。
代表的なTNF阻害薬3剤の比較
インフリキシマブ(レミケード®・インフリキシマブBS)
2003年日本承認(RA治療で最初の生物学的製剤)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与法 | 点滴静注(2時間→1.5時間に短縮) |
| 投与間隔 | 0・2・6週目→以降8週間(4週まで短縮可) |
| MTX併用 | 必須(単独では効果不十分かつ抗体形成リスク) |
| 用量 | 3mg/kg、効果不十分なら6mg/kgまで増量可 |
| バイオシミラー | あり(先行品の約37.7%の薬価) |
| 薬価 | ¥54,950/100mg(先行品) |
ポイント:唯一MTX必須。病院への通院(化学療法室での点滴)が必要。
エタネルセプト(エンブレル®・エタネルセプトBS)
2005年日本承認
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与法 | 皮下注射(自己注射可能) |
| 投与間隔 | 1週間(25mg)または2週間(50mg) |
| MTX併用 | ±(必須ではないが有効) |
| 用量 | 50mg/ml(25mg/0.5ml) |
| バイオシミラー | あり(先行品の約61.2%の薬価) |
| 薬価 | ¥18,359/50mg(先行品) |
ポイント:最初に「自己注射可能」となった製剤。頻回(週1〜2回)の投与が必要。
アダリムマブ(ヒュミラ®・アダリムマブBS)
2008年日本承認
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投与法 | 皮下注射(自己注射可能) |
| 投与間隔 | 2週間(使いやすい間隔) |
| MTX併用 | ほぼ必須(MTX(-)なら80mgに増量) |
| 用量 | 40mg/0.4ml、効果不十分で80mgに増量可 |
| バイオシミラー | あり(先行品の約46.2%の薬価) |
| 薬価 | ¥48,988/40mg(先行品) |
ポイント:2週間に1回の皮下注射で使いやすい。バイオシミラーが複数あり薬価が下がっている。
TNF阻害薬使用時の重要な注意点
感染症スクリーニング(開始前に必須)
結核(TB)のスクリーニング
- 胸部X線
- クォンティフェロン検査(QFT)またはT-SPOT
- 潜在性結核に対する予防投与(イソニアジドなど)
TNF阻害薬は結核の再活性化リスクがあります。特に日本では結核感染者が一定数いるため、開始前の必須チェックです。
HBV(B型肝炎ウイルス)スクリーニング
- HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体
- 陽性者には核酸アナログ製剤で予防
その他感染症のチェック インフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹ワクチンの接種状況確認
抗薬物抗体(抗バイオ抗体)の問題
生物学的製剤(特にキメラ型のインフリキシマブ・ヒト型のアダリムマブ)は、長期使用で抗薬物抗体が形成されることがあります。
抗薬物抗体が形成されると:
- 薬物の血中濃度が低下(トラフ値が下がる)
- 効果が減弱する(二次無効)
- 輸注反応・注射部位反応のリスクが増加
MTXの併用は抗薬物抗体の形成を抑制する効果があるため、特にインフリキシマブ・アダリムマブではMTXの併用が推奨されます。
TNF阻害薬が効かなくなった時(二次無効)
初回bDMARD(主にTNF阻害薬)は20〜30%で効果がなく、反応した患者でも治療開始2年間で約20%が二次無効に直面します(Schaeverbeke T, et al, 2016)。
また、薬剤に対する反応率は、csDMARDとbDMARDの使用経験が増えるにつれて低下していくという問題もあります(Smolen JS, et al, 2015)。
TNF阻害薬が効果不十分な場合: ガイドラインでは「他のTNF阻害薬よりも非TNF阻害薬(IL-6阻害薬・アバタセプト)への切り替えを優先する」と推奨されています。
バイオシミラー(BS)の活用
TNF阻害薬には複数のバイオシミラーがあり、薬価は先行品の37〜62%程度まで低下しています。
患者さんの経済的負担軽減の観点から、バイオシミラーへの切り替えを検討することも重要な選択肢です。
なお、バイオシミラーへの切り替えにあたっては、効果・安全性を確認しながら行うことが推奨されます。
まとめ
- TNF阻害薬は2003年〜2012年にかけて5剤が承認されたRAの中心的な生物学的製剤
- インフリキシマブ:点滴・MTX必須・帯状疱疹2〜3人/100人年
- エタネルセプト:皮下注・週1〜2回・自己注射可
- アダリムマブ:皮下注・2週間ごと・自己注射可
- 開始前に結核・HBVスクリーニング必須
- MTX併用で抗薬物抗体形成を抑制
- 二次無効時は非TNF阻害薬(IL-6・アバタセプト)への切り替えを優先
次回は生物学的製剤②「IL-6阻害薬・T細胞共刺激阻害薬:トシリズマブ・アバタセプト」を解説します。
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