「頭痛くらいで大げさ」「寝れば治る」——そんなふうに思われがちな片頭痛ですが、実は日常生活を大きく制限する疾患です。今回から片頭痛シリーズをお届けします。薬剤師として片頭痛を正しく理解し、患者さんの役に立てるようになりましょう。
片頭痛という名前の誤解
「片頭痛」という名称は頭の片側が痛むことに由来しますが、実際には約4割近くの患者さんが両側性の頭痛を経験しています。
「片頭痛=片側だけ痛い頭痛」ではありません。「片側のこともあるが、両側のこともある」という理解が正確です。
片頭痛の有病率
日本では成人の約8.4%が片頭痛にかかっていると報告されています(疑い例を含む)。
約12人に1人という計算になります。これは決して珍しい疾患ではありません。
特徴的なのは、女性に多いということ。一般的に男性の約3倍程度、女性に多く見られます。理由として女性ホルモン(エストロゲン)との関連が考えられており、月経周期に伴い片頭痛が悪化する「月経関連片頭痛」も知られています。
片頭痛の特徴的な症状
片頭痛には以下の特徴があります。
頭痛の特徴
- 発作的に起こり、4〜72時間持続する
- 片側性(または両側性)のズキズキと脈打つような拍動性の痛み
- 中等度〜重度の強さ(「寝込みたい」レベル)
- 日常的な動作(歩行・階段昇降)により増悪する
「頭が痛いけど、歩いたら余計痛くなった」——これが片頭痛の典型的なパターンです。
随伴症状
- 悪心(吐き気)・嘔吐
- 光過敏:普段は気にならない光がまぶしく不快
- 音過敏:普段は気にならない音が不快
- においに対する過敏(嗅覚過敏)
「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」
片頭痛は大きく2種類に分類されます。
前兆のない片頭痛(最多) 特別な予告症状なく頭痛が始まります。
前兆のある片頭痛 頭痛より前に前兆症状が現れます。
前兆で最も多いのは**視覚性前兆(閃輝暗点)**です。
閃輝暗点(せんきあんてん)とは:視野の一部にキラキラした光・ギザギザした光の輪が見え、やがてそれが拡大して視野の一部が欠けたように見える症状です。通常は20〜30分で消え、その後に頭痛が始まります。
予兆・前兆・頭痛・回復期の4段階
片頭痛の発作は4段階で推移します。
① 予兆期(数時間〜1日前) 頭痛前の何となくした予感。「なんか今日は頭痛になりそう」という感覚。眠気・気分の変調・食欲の変化などが現れます。
② 前兆期(頭痛の直前〜最大60分) 閃輝暗点などの視覚症状・手足のしびれ・言語障害など。通常60分以内に消えます。
③ 頭痛期(4〜72時間) 本格的な片頭痛の発作。拍動性の痛み・悪心・光音過敏が続きます。
④ 回復期(数時間〜1日) 頭痛が改善した後も、倦怠感・集中力低下・食欲不振などが残ることがあります。
片頭痛の増悪因子
片頭痛を引き起こすトリガー(増悪因子)があります。
第1位:ストレス(最も多い)
その他:
- 月経・ホルモン変動
- 睡眠の変化(睡眠不足・寝すぎ)
- 天気・気圧の変化
- 空腹・脱水
- 光・音・においの強い刺激
- アルコール(特に赤ワイン)
- チョコレート・チーズ・加工食品
「雨の日に頭痛がひどくなる」という方が多いのは、気圧低下が関係していると考えられています。
片頭痛は脳の疾患
片頭痛は「ちょっとした頭痛」ではなく、脳の機能的な異常による神経疾患です。
三叉神経血管説が有力とされており、三叉神経が刺激されてCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの神経ペプチドが放出され、神経炎症と血管拡張が起きることで痛みが生じると考えられています。
このCGRPこそが、後述する新世代の片頭痛予防薬(CGRP関連製剤)のターゲットになっています。
まとめ
- 片頭痛は成人の約8.4%(約12人に1人)。女性に多い
- 「片頭痛」は片側とは限らない。4割近くは両側性
- 特徴:拍動性の痛み・4〜72時間持続・動作で増悪・悪心・光音過敏
- 前兆のある片頭痛では閃輝暗点が代表的な前兆
- 発作は予兆→前兆→頭痛→回復期の4段階
- 増悪因子第1位はストレス
- 片頭痛の発症機序にはCGRPが関与
次回は「片頭痛の診断基準:ICHD-3で本物の片頭痛を見極める」を解説します。
≪関連記事≫
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。