まず、こちらの動画をぜひご覧ください。
(YouTube動画)
「心理的安全性」という言葉を、みなさんはご存知ですか?
最近、職場や教育の現場でよく聞くようになったこの言葉。でも「なんとなく知っている」という方も多いのではないでしょうか。
私が心理的安全性という概念に本気で向き合うようになったのは、薬局長という立場になってからです。
心理的安全性とは何か
心理的安全性(Psychological Safety)とは、「チームの中で、自分の考えや疑問、ミスを率直に発言しても、罰せられたり恥をかかされたりしない」と感じられる環境のことです。
ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱した概念で、後にGoogleが自社の調査「Project Aristotle」で「最も生産性の高いチームに共通する最重要因子は心理的安全性だ」と発表したことで、世界中に広まりました。
難しく聞こえますが、要するに**「この場では何でも言っていい」と全員が感じられるかどうか**です。
病院という職場で、心理的安全性がなぜ重要なのか
医療現場では、心理的安全性の有無が患者さんの安全に直結します。
「この処方、少しおかしいかもしれないけど……先生に言いづらいな」「ミスに気づいたけど、怒られるのが怖くて報告できない」
こうした「言えない空気」が、インシデントや医療事故の背景にあることは少なくありません。
逆に心理的安全性の高い職場では、「少し気になることがあるんですが……」という小さな声が上がりやすくなります。その一言が、大きな事故を未然に防ぐことがあります。
22年間病院薬剤師として働いてきた中で、これを何度も実感してきました。
心理的安全性を下げる「4つの不安」
エドモンドソン教授は、心理的安全性を妨げる要因として以下の4つの不安を挙げています。
① 無知だと思われる不安「こんなことも知らないのか」と思われたくないから、わからなくても質問できない。
② 無能だと思われる不安「こんなミスをするのか」と思われたくないから、失敗を隠す・報告しない。
③ 邪魔をしていると思われる不安「そんな余計なことを言って」と思われたくないから、意見や提案をしない。
④ ネガティブだと思われる不安「批判的な人だ」と思われたくないから、問題点を指摘しない。
この4つ、医療現場でも職種を超えてよく見られる心理です。特に「無知・無能と思われる不安」は、新人スタッフや異動してきたばかりのメンバーが感じやすいものです。
薬局長として、私が意識してきたこと
心理的安全性は「仲良し職場を作ること」ではありません。ぬるい環境を作ることでもない。
**「意見や失敗を率直に出せる環境の中で、高い目標に挑戦できること」**がゴールです。
私が薬局長として特に意識してきたのは、以下の3点です。
自分のミスや失敗を率直に開示する 上司や先輩が「実はこの前こういうミスをして、こう対処した」と話せると、スタッフも報告しやすくなります。謝れる上司は弱い上司ではなく、チームに安心感を与える存在です。
「いい質問だね」を口癖にする 「そんなこと聞くの?」という反応が一度あると、その人は二度と質問しなくなります。どんな質問にも「よく気づいたね」「いい視点だね」と反応することで、発言のハードルを下げられます。
失敗を責めず、仕組みを問う 「なぜそんなことをしたの?」ではなく、「どういう状況でそうなったの?次はどうすればいい?」という問いかけへ変える。これだけでスタッフの報告率が変わります。
心理的安全性は一朝一夕では作れない
心理的安全性の高い職場は、「今日から仲良くしよう」という宣言で生まれるものではありません。
日常の小さなやり取りの積み重ねによって、少しずつ醸成されていくものです。
上司の一言、先輩の反応、ミスへの対処の仕方、会議での発言へのリアクション——こうした日々の行動が、職場の空気を作っていきます。
リーダーの役割は、その「空気の土台」を意識的に整え続けることだと感じています。
まとめ
- 心理的安全性とは「何でも言える安心感」——仲良し職場とは違う
- 医療現場では患者安全に直結する重要な概念
- 4つの不安(無知・無能・邪魔・ネガティブと思われること)が発言を妨げる
- リーダーが率先して失敗を開示し、発言を歓迎する姿勢が土台を作る
- 日々の小さな積み重ねが職場の空気を変えていく
動画と合わせて、少しでも参考になれば嬉しいです。
心理的安全性について、もっと詳しく知りたい方はエイミー・エドモンドソン著『恐れのない組織』もおすすめです。
関連記事