「片頭痛って怠け病でしょ」「頭痛くらい我慢できる」——そんな社会の誤解が、片頭痛患者さんを二重に苦しめています。今回は片頭痛をめぐる社会的な問題と、薬剤師の役割を考えます。
衝撃の事実:片頭痛患者の約70%が未治療
片頭痛患者の約70%は受診せず、未治療だったり市販の鎮痛薬で対処しているという現実があります。
約12人に1人が片頭痛にかかっているにも関わらず、そのほとんどが適切な治療を受けていません。
なぜ受診しないのか
受診しない理由はいくつか考えられます。
「頭痛くらいで病院に行っていい」と思っていない 「頭痛で受診するのは大げさ」という罪悪感を持っている患者さんは多いです。
「市販の薬で何とかなっている」と思っている 市販の鎮痛薬(イブプロフェン・アセトアミノフェンなど)で対処できると思っている患者さんが多いのですが、実は使いすぎると「薬剤使用過多による頭痛(MOH)」になるリスクがあります(後述)。
「片頭痛」という病気があることを知らない 「こういう頭痛は私の体質だから仕方ない」と諦めている患者さんも多いです。
「治らない」と思っている 「病院に行っても治らない」という悲観から受診しない患者さんもいます。でも実際には、適切な治療でコントロールできる疾患です。
社会の誤解が患者を傷つける
片頭痛患者さんは、周囲の無理解に苦しんでいます。
職場での場面: 「また頭痛?さぼってるんじゃないの?」 「そんなに痛いなら鎮痛剤飲めばいいじゃない」
家庭での場面: 「気合が足りない」「弱い人間だ」
学校での場面: 「頭痛くらいで学校を休むなんて」
片頭痛が与える社会的・経済的な影響
WHOが世界の疾病負担を調査した「Global Burden of Disease」において、片頭痛は**「最も生活障害をもたらす疾患」のトップ10**に入っています。
日本での影響:
- 仕事・学業のパフォーマンス低下
- 欠勤・早退・外出の制限
- 家事・育児への支障
- QOL(生活の質)の著しい低下
「寝込みたいほど痛いのに、仕事を休めない」「大事な会議・イベントに参加できない」——こういった状況が繰り返されることで、ストレスが溜まり(ストレスは片頭痛の最大の増悪因子)、頭痛がさらに悪化するという悪循環に陥ります。
片頭痛の増悪因子第1位はストレス
片頭痛を悪化させる一番の要因がストレスです。
「片頭痛がある → 仕事・学業・人間関係に支障が出る → 周囲から理解されない → ストレスが溜まる → 頭痛がさらに増悪」
この負のスパイラルが、片頭痛患者さんの生活を蝕んでいきます。
頭痛の頻度や強さがどんどん悪化して、週に何日も頭痛が起きることで、外出することに躊躇するようになったり、仕事が思うようにできず、自己嫌悪に陥ることも……。
医療者の誤解も問題
「社会だけでなく、医療者の片頭痛に対する理解もまだまだ不十分」——これが現実です。
「頭痛で来院→とりあえず鎮痛薬を処方」という対応だけでは不十分です。
本来必要なこと:
- 正確な診断(片頭痛なのか、緊張型頭痛なのか)
- 急性期治療薬の適切な選択(トリプタンが必要か、NSAIDsで十分か)
- 予防薬の適応評価(月に2回以上の発作→予防薬の検討)
- MOH(薬剤使用過多による頭痛)のリスク評価
- 患者への疾患教育
片頭痛は「治療可能な疾患」
「頭痛は治らない病気だと思っていた」という患者さんは多いです。でも違います。
片頭痛は治療可能な疾患です。
適切な治療によって:
- 発作の頻度が大幅に減る
- 発作が来ても短時間で回復できる
- 予防治療で発作そのものを防ぐことができる
- 2021年以降はCGRP関連製剤という革新的な新薬もある
「薬で治療できる疾患なのに、我慢している人がたくさんいる」——これを変えていくのが、薬剤師を含む医療従事者の役割です。
薬剤師にできること
薬剤師は「疾患啓発」のフロントラインに立てます。
① OTC薬を販売する際の声かけ 「鎮痛薬を月に10日以上使っていませんか?」「もし月に2回以上頭痛があれば、頭痛外来への受診を検討してみてください」
② 処方箋受付時の確認 片頭痛の薬が処方されている患者さんへの服薬指導で、現在の頭痛の状況・服薬頻度・日常生活への影響を確認する。
③ 患者の話を最後まで聴く 「頭痛くらい大したことない」ではなく、患者さんの苦労を共感的に受け止める。「毎日大変でしたね」という一言が信頼関係を作ります。
まとめ
- 片頭痛患者の約70%が未治療または市販薬のみで対処している
- 受診しない理由:「大げさ」という罪悪感・知識不足・諦め
- 社会・職場・医療者の誤解が患者さんを二重に苦しめる
- ストレスは増悪因子第1位→負のスパイラルに陥りやすい
- 片頭痛は治療可能な疾患。薬剤師は疾患啓発の最前線に立てる
次回は「頭痛治療の2本立て:急性期治療薬と予防薬の考え方」を解説します。
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