2026年8月24日月曜日

RA薬物療法の全体像:csDMARD・bDMARD・tsDMARDを整理する【RAシリーズ④】

 関節リウマチの薬物療法は、略語が多くて混乱しやすい領域です。今回はcsDMARD・bDMARD・tsDMARDという3つの大分類と治療アルゴリズムを整理します。


DMARDとは

DMARD(Disease Modifying Anti-Rheumatic Drug)とは「疾患修飾性抗リウマチ薬」のことです。

単に症状を緩和するだけでなく、RAの病態そのものに作用し、関節破壊の進行を抑制する薬剤です。

DMARDは3つに大別されます:

  • csDMARD(従来型合成DMARD)
  • bDMARD(生物学的DMARD)
  • tsDMARD(分子標的型合成DMARD)

csDMARD(従来型合成DMARD)

小分子化合物で、化学合成された従来の薬剤です。

MTX(メトトレキサート):RA治療の第一選択薬・アンカードラッグ。1999年日本承認。

その他のcsDMARD

  • サラゾスルファピリジン(SSZ):1942年開発、1995年RA適応
  • レフルノミド(LEF):2003年承認
  • ブシラミン(BUC):1992年承認(日本独自薬)
  • タクロリムス(TAC):免疫抑制薬として使用
  • イグラチモド(IGU):2012年承認
  • ミゾリビン:免疫抑制薬として使用

bDMARD(生物学的DMARD)

タンパク質製剤(抗体薬など)で、特定のサイトカインや受容体を狙い撃ちします。

TNF阻害薬(最初に登場したカテゴリ)

  • インフリキシマブ(レミケード®):2003年日本承認、最初の生物学的製剤
  • エタネルセプト(エンブレル®):2005年承認
  • アダリムマブ(ヒュミラ®):2008年承認
  • ゴリムマブ(シンポニー®):2011年承認
  • セルトリズマブペゴル(シムジア®):2012年承認

IL-6阻害薬

  • トシリズマブ(アクテムラ®):2008年承認(日本発:中外製薬)
  • サリルマブ(ケブザラ®):2018年承認
  • オゾラリズマブ(ナノゾラ®):2022年承認(ナノボディ技術)

T細胞共刺激阻害薬

  • アバタセプト(オレンシア®):2010年承認

バイオシミラー(BS): 各先行バイオ医薬品のコピー製剤。2014年以降に順次承認。薬価が先行品の約37〜62%程度に安い。


tsDMARD(分子標的型合成DMARD)

低分子化合物で、細胞内の特定のシグナル伝達分子(JAK)を阻害します。内服可能なのが大きな特徴です。

JAK阻害薬(全て内服薬)

  • トファシチニブ(ゼルヤンツ®):2013年承認
  • バリシチニブ(オルミエント®):2017年承認
  • ペフィシチニブ(スマイラフ®):2019年承認
  • ウパダシチニブ(リンヴォック®):2020年承認
  • フィルゴチニブ(ジセレカ®):2020年承認

補助的な治療薬

DMARDではありませんが、RA治療に補助的に使われます。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬): 疼痛緩和目的。必要最小量で短期間が原則。

副腎皮質ステロイド(GC): 早期かつcsDMARD使用RA患者に必要最小量を投与し、可能な限り短期間(数ヶ月以内)で漸減中止。

抗RANKL抗体(デノスマブ:プラリア®): 疾患活動性が低下しても骨びらんが進行する患者(特にRF/ACPA陽性)で使用を考慮。


2024年版 治療アルゴリズムの流れ

RA診療ガイドライン2024(日本リウマチ学会)に基づく薬物治療の流れ:

フェーズⅠ(第一段階) MTX(アンカードラッグとして考慮)± csDMARD(MTX以外)

↓ 6ヶ月以内に治療目標未達成の場合(3ヶ月で改善なければ見直し)

フェーズⅡ(第二段階)

  • MTX併用可能:[bDMARD or JAKi] + MTX ± csDMARD
  • MTX非併用:[bDMARD or JAKi] ± csDMARD

※長期安全性・医療経済の観点からbDMARDを優先。JAKiは悪性腫瘍・心血管・血栓リスクを考慮。

↓ 治療目標未達成の場合

フェーズⅢ(第三段階) [bDMARD or JAKi]の変更

※TNF阻害薬が効果不十分の場合は、他のTNF阻害薬より非TNF阻害薬(IL-6阻害薬・アバタセプト)への切り替えを優先


治療薬の選択は「患者さんのライフスタイル」を考慮する

薬剤を選ぶ際には有効性・安全性だけでなく、患者さんの生活スタイルも考慮します。

  • 自己注射が可能か(皮下注製剤の選択)
  • 点滴に通えるか(静注製剤の選択)
  • 内服を好むか(JAK阻害薬の選択)
  • 妊娠・授乳の希望があるか(セルトリズマブ:胎盤移行が少ない)
  • 仕事・スポーツなど活動的な生活を送りたいか
  • 医療費の負担(バイオシミラーの活用)

共有意思決定(Shared Decision Making)——患者さんと一緒に治療方針を決めることがT2Tの精神にも合致しています。


まとめ

  • DMARDは3分類:csDMARD(従来型)・bDMARD(生物学的)・tsDMARD(分子標的型)
  • MTXはアンカードラッグ(第一選択薬)
  • bDMARD:TNF阻害薬・IL-6阻害薬・T細胞共刺激阻害薬
  • tsDMARD:JAK阻害薬(内服可能)
  • 治療アルゴリズム:MTX→(効果不十分)→bDMARD or JAKi→(効果不十分)→変更
  • TNF阻害薬無効→非TNF阻害薬(IL-6・アバタセプト)に切り替え
  • 患者のライフスタイルに合った薬の選択と共有意思決定が重要

次回は「MTX(メトトレキサート):アンカードラッグの特徴と副作用管理」を詳しく解説します。


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