「トリプタンを飲んでいるのに効かない」——そのほとんどは飲むタイミングが遅いことが原因です。今回はトリプタン製剤の特徴と服薬タイミングの重要性を解説します。
急性期治療薬の選択アルゴリズム
片頭痛の急性期治療薬は頭痛の強さで選択します。
軽度〜中等度の頭痛 → アセトアミノフェンまたはNSAIDs(イブプロフェン・ナプロキセン・アスピリンなど)
中等度〜重度の頭痛 または「軽度でも過去にNSAIDsで効果がなかった場合」 → トリプタン製剤が第一選択
トリプタンとは何か
トリプタンはセロトニン(5-HT₁B/1D)受容体作動薬です。
主な作用:
- 血管収縮作用:片頭痛発作時に拡張した血管を収縮させる
- 三叉神経抑制作用:神経ペプチド(CGRPなど)の放出を抑制して神経炎症を鎮める
「痛みを止める」のではなく「片頭痛の発症機序そのものに作用する」点が、ただの鎮痛薬との大きな違いです。
最重要ポイント:服薬タイミング
トリプタンは飲むタイミングが命です。
正しいタイミング:頭痛が始まってから早期(20〜30分以内)
× 効果が薄くなるタイミング:
- 頭痛が始まる前(前兆期・予兆期のみの段階)
- 頭痛が始まってからかなり時間が経った後(頭痛ピーク時)
なぜ頭痛前では効かないのか?トリプタンは消炎鎮痛薬ではないため、頭痛が発生していない段階では効果がありません。また頭痛ピーク時は薬の吸収が悪くなっている(胃腸の動きが低下)こともあり、効果が出にくくなります。
服薬タイミングの実際
前兆のある片頭痛の場合: 前兆期の後半(前兆が始まってから30分くらい)〜頭痛初期に服用
前兆のない片頭痛の場合: 「あ、片頭痛が始まった」と分かったら20〜30分以内に服用
「頭痛が来るかも」という予感(予兆)の段階ではまだ服用せず、本格的な頭痛が始まったと確認してからできるだけ早く飲む——これが基本です。
悪心・嘔吐が強い時の対処法
片頭痛の発作中は悪心・嘔吐が起きやすく、内服薬を飲みにくいことがあります。
対策:
- トリプタンやNSAIDs内服前に**制吐剤(メトクロプラミドなど)**を服用して薬の嘔吐を防ぐ
- 嘔吐がひどい場合はトリプタン点鼻薬・注射薬・NSAIDs坐薬を検討
剤形別の効果発現速度: 注射薬 > 点鼻薬 > 内服薬
「飲んでも吐いてしまう」という患者さんには、点鼻薬の選択肢を知らせることが薬剤師の大切な役割です。
国内で使用可能なトリプタン製剤
日本で使用可能なトリプタン系薬剤の概要です。
スマトリプタン(イミグラン®) 国内初のトリプタン。内服錠・点鼻薬・注射薬の3剤形あり。効果発現が比較的速い(点鼻・注射)。注射薬は最も速い。
ゾルミトリプタン(ゾーミッグ®) 内服錠・口腔内崩壊錠(OD錠)あり。口の中で溶かして飲めるOD錠は嘔気時にも便利。
エレトリプタン(レルパックス®) 脂溶性が高く中枢神経への移行性が良い。一部の患者で有効率が高い。
リザトリプタン(マクサルト®) OD錠あり。効果発現が比較的速い。
ナラトリプタン(アマージ®) 半減期が長い(約6時間)。効果の立ち上がりは遅いが長持ちする。再発頭痛が起きにくい。
トリプタンが効かない場合の対処
「トリプタンを飲んでも効かない」という患者さんへの対応:
まずタイミングを確認する 「飲んだのは頭痛が始まってどのくらい経ってからですか?」——ほとんどの場合、飲むのが遅い。
別の剤形・別の種類に変更を検討 内服錠で効かない → 点鼻薬・注射薬 A社のトリプタンで効かない → B社のトリプタンに変更(作用に違いがある)
NSAIDsとの併用 トリプタン+イブプロフェン・ナプロキセンの組み合わせが有効なケースがある。
制吐剤の先行投与 吐き気で内服が困難な場合、先に制吐剤を投与してから内服。
新薬:ジタン系(ラスミジタン)
2022年6月に登場した新しい急性期治療薬がラスミジタン(レイボー®)(ジタン系薬)です。
特徴:
- セロトニン5-HT₁F受容体選択的作動薬(トリプタンとは作用機序が異なる)
- 血管収縮作用がない→ 心血管疾患のある患者にも使いやすい
- トリプタンより服薬タイミングの許容度が広い(遅れても有効)
- トリプタンが効かなかった患者にも有効なことがある
注意点:中枢移行性が高いため眠気・めまいが出やすい。服用後8時間は自動車運転禁止。
薬剤師として確認すべきこと
トリプタンが処方されている患者さんへの服薬指導で確認・指導すること:
- 服薬タイミング:「頭痛が始まってから早めに飲んでいますか?」
- 頭痛の頻度:「月に何回くらい頭痛がありますか?」(月10日以上→MOH警戒)
- 効果の確認:「飲んでから2時間以内に効果を感じますか?」
- 嘔気・嘔吐の有無:「薬を飲んでも吐いてしまうことはありますか?」(→ 点鼻薬の提案)
- 禁忌の確認:「狭心症・脳梗塞の既往はありますか?」(血管収縮作用あり)
まとめ
- 急性期治療薬はトリプタン(中等度以上)とNSAIDs/APAP(軽度)で使い分ける
- トリプタンの服薬タイミングが最重要:頭痛開始後20〜30分以内
- 頭痛前(前兆・予兆期)では効かない。頭痛ピーク時は効きにくい
- 嘔気・嘔吐時は点鼻薬・注射薬・NSAIDs坐薬を検討
- 効かない時は「タイミング確認→剤形変更→種類変更」の順に検討
- ジタン系(レイボー®)は心血管リスクのある患者や遅れた服薬でも有効な場合あり
次回は「CGRP関連製剤:片頭痛予防の革命的新薬」を解説します。
≪関連記事≫
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。