2026年8月10日月曜日

片頭痛予防薬の種類と選択:降圧薬・抗てんかん薬・漢方薬を解説【片頭痛シリーズ⑦】

 CGRP関連製剤以外にも、片頭痛の予防薬には様々な選択肢があります。今回は既存の予防薬の種類・特徴・薬剤師として知っておくべきポイントを解説します。


片頭痛予防薬の全体像

片頭痛の予防薬は、もともとは別の疾患のために開発されたものが多いという特徴があります。

大きく4カテゴリに分けられます。

  1. 降圧薬(β遮断薬・Ca拮抗薬)
  2. 抗てんかん薬(バルプロ酸・トピラマート)
  3. 抗うつ薬(三環系抗うつ薬)
  4. CGRP関連製剤(2021年登場、片頭痛専用)
  5. 漢方薬(呉茱萸湯・葛根湯など)

降圧薬

プロプラノロール(インデラル®など):β遮断薬

最も歴史が長く、エビデンスの充実した片頭痛予防薬のひとつです。

特徴:

  • 高血圧の合併がある患者さんにはとくに有用
  • 投与量:40〜240mg/日(分2〜4)

注意点:

  • 気管支喘息には禁忌(気管支収縮を増悪)
  • 糖尿病患者では低血糖症状をマスクする可能性
  • 中止する際は急に止めず漸減が必要(狭心症リスク)
  • 徐脈・低血圧の副作用

ロメリジン(ミグシス®):Ca拮抗薬

特徴:

  • 日本で最も処方頻度が高い片頭痛予防薬のひとつ
  • 一般的に副作用が少なく使いやすい
  • 投与量:10mg/日(分2)

注意点:

  • 眠気・体重増加が出ることがある
  • 降圧作用は弱め(低血圧ぎみの方にも使いやすい)

抗てんかん薬

バルプロ酸(デパケン®など)

てんかんや気分安定薬として広く使われる薬剤が、片頭痛予防にも有効です。

特徴:

  • エビデンスが豊富
  • 投与量:400〜1000mg/日

注意点:

  • 女性の妊孕性年齢への使用には慎重に(催奇形性:神経管閉鎖障害・胎児バルプロ酸症候群)
  • 体重増加・脱毛・眠気の副作用
  • 肝機能障害に注意(定期的な肝機能チェック)
  • 高アンモニア血症に注意

トピラマート(トピナ®)

特徴:

  • 抗てんかん薬の中で体重減少効果がある(肥満患者には有利)
  • 投与量:50〜200mg/日(分2)

注意点:

  • 認知機能低下(「言葉が出にくくなった」「計算が遅くなった」)
  • 腎結石のリスク(水分摂取を十分に)
  • 閉塞隅角緑内障のリスク(視力変化に注意)
  • 炭酸飲料の味が変わる(炭酸脱水酵素阻害作用による)

抗うつ薬

アミトリプチリン(トリプタノール®):三環系抗うつ薬

うつ病の治療薬として開発されましたが、片頭痛予防にも有効です。特に緊張型頭痛を合併している場合に使いやすい選択肢です。

特徴:

  • うつ・不眠を合併している患者さんに一石二鳥
  • 少量(10〜75mg/日)から使用

注意点:

  • 眠気(就寝前に服用することが多い)
  • 口渇・便秘・尿閉(抗コリン作用)
  • 体重増加
  • 高齢者では転倒リスクに注意

漢方薬

薬剤師として漢方薬も知っておきたいところです。副作用が少なく、西洋薬が使いにくい患者さんへの選択肢になります。

呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

適応:

  • 頭頂部の強い頭痛(「頭が割れそう」「吐きそう)
  • 悪心・嘔吐を伴う頭痛
  • 手足が冷えやすい体質

特徴: 片頭痛に最も頻繁に使われる漢方薬のひとつ。急性期(発作時)にも予防にも使える。

葛根湯(かっこんとう)

適応:

  • 肩こりを伴う頭痛
  • 発汗のない初期症状

特徴: 緊張型頭痛や筋肉の緊張を伴う頭痛に。風邪の初期にも使われる。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

適応:

  • 月経関連片頭痛(月経前後に悪化する頭痛)
  • 肩こり・のぼせ・下半身の冷えを伴う場合

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

適応:

  • 冷え(特に手足の冷え)を伴う頭痛

予防薬の選択基準

予防薬を選ぶ際に考慮するポイント:

患者の状態推奨される薬剤
高血圧を合併プロプラノロール・ロメリジン
肥満・体重増加が気になるトピラマート
不眠・うつを合併アミトリプチリン
月経関連片頭痛桂枝茯苓丸・フレマネズマブ
妊娠希望の女性バルプロ酸は避ける
既存薬が無効CGRP関連製剤
副作用が気になる漢方薬・ロメリジン

予防薬使用時の注意点

① 効果の判定には時間がかかる 多くの予防薬は「2〜3ヶ月使用して効果を評価する」ことが原則です。「1週間飲んで効かないから止める」では評価できません。

② 頭痛ダイアリーで評価する 漠然と「効いた・効かない」ではなく、頭痛ダイアリーで頭痛日数・強さ・急性期薬使用回数を記録して客観的に評価します。

③ 急に止めない プロプラノロールなどは急な中止でリバウンドが起きる薬剤もあります。


まとめ

  • 既存の予防薬カテゴリ:降圧薬・抗てんかん薬・抗うつ薬・漢方薬
  • プロプラノロール:高血圧合併に有用。喘息には禁忌
  • ロメリジン:日本で使いやすい。副作用比較的少ない
  • バルプロ酸:エビデンス豊富。妊孕性年齢の女性には慎重に
  • トピラマート:体重減少効果。認知機能・腎結石に注意
  • 漢方薬:呉茱萸湯(悪心・嘔吐伴う頭痛)が最も頻用
  • 予防薬の効果判定は2〜3ヶ月後。頭痛ダイアリーで客観評価

次回は「薬剤使用過多による頭痛(MOH):薬の飲みすぎで頭痛がひどくなる」を解説します。


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