TNF阻害薬が効かない患者さんにも有効な生物学的製剤が、IL-6阻害薬(トシリズマブなど)とT細胞共刺激阻害薬(アバタセプト)です。特にトシリズマブは日本生まれの世界的な薬です。
IL-6阻害薬
IL-6(インターロイキン-6)はRAの炎症において重要なサイトカインです。特に全身性の炎症症状(発熱・CRP上昇・疲労感・貧血)に深く関わります。
トシリズマブ(アクテムラ®):日本が誕生させた革命的な薬
2008年日本承認(国産:中外製薬が開発)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標的 | IL-6受容体 |
| 投与法 | 点滴(1時間)または皮下注(自己注射可) |
| 点滴間隔 | 4週間 |
| 皮下注間隔 | 1週間 |
| MTX併用 | 不要(単独でも高い有効性) |
| 点滴用量 | 8mg/kg |
| 皮下注用量 | 162mg/0.9ml |
トシリズマブの特徴:
- MTXを使えない患者(腎機能低下・高齢者・肺疾患合併など)にも有効
- IL-6を阻害することで、CRP・発熱・貧血などの全身症状が改善する
- TNF阻害薬が無効だった患者にも有効なケースが多い
注意点:
- IL-6を阻害するため、感染しても炎症反応(発熱・CRP上昇)が出にくくなる(マスクされる)
- 「熱が出ないから大丈夫」と感染を見落とすリスクがある
- 腸管穿孔・消化管穿孔のリスクあり(特にステロイドとの併用・腸管憩室のある患者)
サリルマブ(ケブザラ®)
2018年日本承認
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標的 | IL-6受容体(トシリズマブと同じ) |
| 投与法 | 皮下注・自己注射可 |
| 投与間隔 | 2週間(必要に応じ1週間に短縮可) |
| 用量 | 200mg/1.14ml |
オゾラリズマブ(ナノゾラ®)
2022年日本承認(最も新しいIL-6阻害薬)
ナノボディ技術を用いた新世代の抗IL-6受容体抗体。4週間に1回の皮下注射。
T細胞共刺激阻害薬:アバタセプト(オレンシア®)
2010年日本承認
作用機序:T細胞を活性化させない
RAの免疫異常は、T細胞が活性化されることから始まります。
T細胞が活性化されるためには「2つのシグナル」が必要:
- シグナル1:T細胞受容体(TCR)と抗原提示細胞(APC)のMHCクラスII分子の結合
- シグナル2(共刺激):CD28(T細胞)とCD80/86(APC)の結合
アバタセプトは**CTLA4-IgG(CTLA4の細胞外ドメインとIgGのFcの融合タンパク)**として、CD80/86に先回りして結合し、シグナル2をブロックします。
→ T細胞が活性化されない→炎症が起きない
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 標的 | CD80/86(T細胞共刺激) |
| 投与法 | 点滴(30分)または皮下注(自己注射可) |
| 点滴間隔 | 隔週で3回→その後4週間 |
| 皮下注間隔 | 1週間 |
| MTX併用 | ±(単独でも有効) |
| 点滴用量 | 500mg(60kg未満)・750mg(60〜100kg) |
| 皮下注用量 | 125mg/ml |
アバタセプトの特徴:
- 作用機序がTNF阻害薬・IL-6阻害薬と全く異なるため、それらが無効だった患者に有効なことがある
- 感染症リスクがTNF阻害薬より低いとされる(特に肺疾患合併RA患者で有利)
- 間質性肺炎を合併しているRA患者さんに比較的使いやすい
ゴリムマブ(シンポニー®)・セルトリズマブペゴル(シムジア®)
これらもTNF阻害薬に分類されますが、後発承認(2011年・2012年)で特徴的な点を押さえておきましょう。
ゴリムマブ(シンポニー®)
- 4週間に1回の皮下注射
- 完全ヒト型抗TNF-α抗体
セルトリズマブペゴル(シムジア®)
- Fc部分を持たない(唯一のPEG化Fab抗体)
- 胎盤通過がほとんどない→妊娠中でも使用可能な唯一のTNF阻害薬
- 授乳中の母乳への移行も極めて少ない
- 妊娠を希望するRA患者さんに重要な選択肢
生物学的製剤の有効性を決める因子
生物学的製剤が効くかどうかは以下の因子が影響します:
有効性を高める因子:
- 適切な標的分子の選択(患者の病態に合ったターゲット)
- トラフ値(次回投与直前の血中濃度)が最低有効血中濃度を超えること
- 投与量と投与間隔の適切な設定
- MTX・ステロイドの適切な併用
- Fc受容体との親和度
有効性を下げる因子:
- 抗バイオ抗体(抗薬物抗体)の形成
- 製剤の組織移行性の低さ
まとめ
- IL-6阻害薬(トシリズマブ・サリルマブ・オゾラリズマブ):CRP・発熱・貧血などの全身症状に有効。感染時に炎症反応がマスクされることに注意
- トシリズマブは日本発の世界的な薬。MTX不要
- アバタセプト:T細胞共刺激を阻害。肺疾患合併RAに有利
- セルトリズマブ:唯一の妊娠中使用可能なTNF阻害薬
- TNF阻害薬無効→非TNF阻害薬(IL-6・アバタセプト)への切り替えを優先
次回は「JAK阻害薬:内服可能な分子標的薬と帯状疱疹リスク」を解説します。
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