2026年7月5日日曜日

OPQRST法:症状を立体的に引き出す問診術【薬歴シリーズ⑭】

 こんばんは、田浦マインドです。

「問診が診断の命綱」という言葉があります。医師の診断の約80%は問診だけでほぼ決まるとも言われています。今回は症状を漏れなく引き出すための問診フレームワーク「OPQRST法」を解説します。


問診が大切な理由

症状は患者さんしか知らない「第一の証拠」です。検査は仮説を確認するためのツールですが、問診が仮説を作ります。

良い問診 → 的を絞った検査 → 早期診断 → 患者さんの負担減

薬剤師にとっても、服薬指導・副作用モニタリングに直結するスキルです。「話を聞く」だけでなく「何を聞くか」「どう聞くか」が重要です。


OPQRST法とは

OPQRSTは、症状(特に痛みや不快感)を立体的に把握するための6つの質問フレームワークです。

文字意味質問例
OOnset(発症様式)いつ、どのように始まりましたか?
PProvocation/Palliation(増悪・寛解)何をすると悪化・軽快しますか?
QQuality(性状)どんな感じの痛みですか?
RRegion/Radiation(部位・放散)どこが、どこへ広がりますか?
SSeverity(程度)10点満点で何点の痛みですか?
TTiming(時間経過)持続的?間欠的?いつ頃から?

各項目の詳細

O:Onset(発症様式)

「いつ、どのように始まりましたか?」

突然始まった(sudden onset)のか、徐々に始まった(gradual onset)のかで、疾患の絞り込みが大きく変わります。

  • 突然の激しい頭痛 → くも膜下出血を疑う(「今まで経験したことのない頭痛」)
  • 徐々に始まった胸痛 → 筋骨格性の可能性が高い

P:Provocation/Palliation(増悪・寛解)

「何をすると悪化しますか?何をすると楽になりますか?」

  • 深呼吸で悪化する胸痛 → 胸膜炎・肋間神経痛を疑う
  • 労作で悪化し安静で改善する胸痛 → 狭心症を疑う
  • 食後に悪化する胃痛 → 消化性潰瘍の可能性

Q:Quality(性状)

「どんな感じの痛みですか?」

痛みの「質」は疾患を大きく絞り込みます。

  • 締め付けるような → 心筋梗塞・狭心症
  • 引き裂かれるような → 大動脈解離
  • 刺すような・チクチク → 筋骨格性・胸膜炎
  • 焼けるような → 逆流性食道炎

R:Region/Radiation(部位・放散)

「どこが痛みますか?どこかへ広がりますか?」

放散痛は臓器の神経支配を反映した重要な情報です。

  • 左肩への放散痛 → 心臓(横隔膜神経)
  • 右肩への放散痛 → 胆嚢
  • 左腕・下顎への放散 → 心筋梗塞の典型

S:Severity(程度)

「10点満点で何点の痛みですか?」(NRS:数値評価スケール)

痛みを数値化することで、前回との比較・薬剤効果の評価が客観的にできます。「10点満点で8点だったのが、薬を飲んで4点になった」という情報は薬歴のS欄に記録します。

T:Timing(時間経過)

「持続的ですか?間欠的ですか?いつ頃から?」

  • 数分で消える胸痛 → 狭心症(心筋梗塞は持続する)
  • 毎日特定の時間に起きる頭痛 → 群発頭痛
  • 動くたびに痛む → 筋骨格性

LIQORA法:薬剤師向けの問診フレーム

OPQRSTと並んで、LIQORAも活用できます。

文字意味
LLocation(部位)
IIntensity(強度)
QQuality(性状)
OOnset(発症)
RRadiation(放散)
AAssociated symptoms(随伴症状)

随伴症状(吐き気・発熱・息切れなど)を必ず確認することで、より正確な状態把握が可能です。


実践例:OPQRST法で「胸が痛い」患者さんに問診する

患者:55歳男性「昨日から胸が痛い」

OPQRSTで問診を進めると——

O(発症):昨日の午後から。デスクワーク中に突然「ズキッ」とした

P(増悪):深呼吸すると痛い。安静にしていれば少し楽

Q(性状):「刺すような」「チクチクする」感じ

R(部位):左の胸の前、やや外側。どこかへ広がる感じはない

S(程度):NRS 5/10

T(時間):持続的。昨日から今朝にかけてやや増悪

分析:「深呼吸で悪化」は胸膜炎・肋間神経痛の特徴。「刺すような」痛みは筋骨格系・胸膜炎を示唆(心筋梗塞は「締め付け」が多い)。放散痛なし・安静で軽快 → 心筋梗塞より可能性低い。

→ 胸膜炎または筋骨格性胸痛を第一に疑う。

このように、OPQRSTを使うことで「危険な胸痛か、そうでないか」の判断がしやすくなります。


まとめ

  • 問診は診断の最大の情報源。「何を・どう聞くか」が重要
  • OPQRST=Onset・Provocation・Quality・Region・Severity・Timing
  • 痛みの「性状(Q)」と「増悪因子(P)」が鑑別の最大のヒントになる
  • 放散痛(R)は臓器の神経支配を反映した重要な診断情報
  • 薬剤師の問診力は服薬指導・副作用モニタリング・処方提案に直結する

次回は「仮説演繹法——探偵のように病態を推理する思考プロセス」を解説します。


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