こんばんは、田浦マインドです。
「問診が診断の命綱」という言葉があります。医師の診断の約80%は問診だけでほぼ決まるとも言われています。今回は症状を漏れなく引き出すための問診フレームワーク「OPQRST法」を解説します。
問診が大切な理由
症状は患者さんしか知らない「第一の証拠」です。検査は仮説を確認するためのツールですが、問診が仮説を作ります。
良い問診 → 的を絞った検査 → 早期診断 → 患者さんの負担減
薬剤師にとっても、服薬指導・副作用モニタリングに直結するスキルです。「話を聞く」だけでなく「何を聞くか」「どう聞くか」が重要です。
OPQRST法とは
OPQRSTは、症状(特に痛みや不快感)を立体的に把握するための6つの質問フレームワークです。
| 文字 | 意味 | 質問例 |
|---|---|---|
| O | Onset(発症様式) | いつ、どのように始まりましたか? |
| P | Provocation/Palliation(増悪・寛解) | 何をすると悪化・軽快しますか? |
| Q | Quality(性状) | どんな感じの痛みですか? |
| R | Region/Radiation(部位・放散) | どこが、どこへ広がりますか? |
| S | Severity(程度) | 10点満点で何点の痛みですか? |
| T | Timing(時間経過) | 持続的?間欠的?いつ頃から? |
各項目の詳細
O:Onset(発症様式)
「いつ、どのように始まりましたか?」
突然始まった(sudden onset)のか、徐々に始まった(gradual onset)のかで、疾患の絞り込みが大きく変わります。
- 突然の激しい頭痛 → くも膜下出血を疑う(「今まで経験したことのない頭痛」)
- 徐々に始まった胸痛 → 筋骨格性の可能性が高い
P:Provocation/Palliation(増悪・寛解)
「何をすると悪化しますか?何をすると楽になりますか?」
- 深呼吸で悪化する胸痛 → 胸膜炎・肋間神経痛を疑う
- 労作で悪化し安静で改善する胸痛 → 狭心症を疑う
- 食後に悪化する胃痛 → 消化性潰瘍の可能性
Q:Quality(性状)
「どんな感じの痛みですか?」
痛みの「質」は疾患を大きく絞り込みます。
- 締め付けるような → 心筋梗塞・狭心症
- 引き裂かれるような → 大動脈解離
- 刺すような・チクチク → 筋骨格性・胸膜炎
- 焼けるような → 逆流性食道炎
R:Region/Radiation(部位・放散)
「どこが痛みますか?どこかへ広がりますか?」
放散痛は臓器の神経支配を反映した重要な情報です。
- 左肩への放散痛 → 心臓(横隔膜神経)
- 右肩への放散痛 → 胆嚢
- 左腕・下顎への放散 → 心筋梗塞の典型
S:Severity(程度)
「10点満点で何点の痛みですか?」(NRS:数値評価スケール)
痛みを数値化することで、前回との比較・薬剤効果の評価が客観的にできます。「10点満点で8点だったのが、薬を飲んで4点になった」という情報は薬歴のS欄に記録します。
T:Timing(時間経過)
「持続的ですか?間欠的ですか?いつ頃から?」
- 数分で消える胸痛 → 狭心症(心筋梗塞は持続する)
- 毎日特定の時間に起きる頭痛 → 群発頭痛
- 動くたびに痛む → 筋骨格性
LIQORA法:薬剤師向けの問診フレーム
OPQRSTと並んで、LIQORAも活用できます。
| 文字 | 意味 |
|---|---|
| L | Location(部位) |
| I | Intensity(強度) |
| Q | Quality(性状) |
| O | Onset(発症) |
| R | Radiation(放散) |
| A | Associated symptoms(随伴症状) |
随伴症状(吐き気・発熱・息切れなど)を必ず確認することで、より正確な状態把握が可能です。
実践例:OPQRST法で「胸が痛い」患者さんに問診する
患者:55歳男性「昨日から胸が痛い」
OPQRSTで問診を進めると——
O(発症):昨日の午後から。デスクワーク中に突然「ズキッ」とした
P(増悪):深呼吸すると痛い。安静にしていれば少し楽
Q(性状):「刺すような」「チクチクする」感じ
R(部位):左の胸の前、やや外側。どこかへ広がる感じはない
S(程度):NRS 5/10
T(時間):持続的。昨日から今朝にかけてやや増悪
分析:「深呼吸で悪化」は胸膜炎・肋間神経痛の特徴。「刺すような」痛みは筋骨格系・胸膜炎を示唆(心筋梗塞は「締め付け」が多い)。放散痛なし・安静で軽快 → 心筋梗塞より可能性低い。
→ 胸膜炎または筋骨格性胸痛を第一に疑う。
このように、OPQRSTを使うことで「危険な胸痛か、そうでないか」の判断がしやすくなります。
まとめ
- 問診は診断の最大の情報源。「何を・どう聞くか」が重要
- OPQRST=Onset・Provocation・Quality・Region・Severity・Timing
- 痛みの「性状(Q)」と「増悪因子(P)」が鑑別の最大のヒントになる
- 放散痛(R)は臓器の神経支配を反映した重要な診断情報
- 薬剤師の問診力は服薬指導・副作用モニタリング・処方提案に直結する
次回は「仮説演繹法——探偵のように病態を推理する思考プロセス」を解説します。
≪関連記事≫
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。