こんばんは、田浦マインドです。
「胸が痛い」は薬剤師が患者さんから受ける相談の中でも、特に注意が必要な症状のひとつです。胸痛には命に関わる緊急疾患から、比較的軽症なものまで幅広い原因があります。今回は胸痛の鑑別診断を解説します。
胸痛で絶対に見逃してはいけない4疾患
**MUSEのM(Must not miss)**として、まずこの4つを除外する必要があります。
①急性心筋梗塞(AMI)
特徴:「締め付けるような」「押しつぶされるような」胸痛。左肩・左腕・顎への放散痛。冷汗を伴う。
OPQRSTで確認すべき点:
- Q(性状):「締め付け」「重い」→ 心筋梗塞を強く示唆
- P(増悪因子):安静でも持続する(狭心症は安静で改善)
- R(放散):左肩・左腕・顎への放散痛
②大動脈解離
特徴:「引き裂かれるような」「ズバッとした」激烈な胸背部痛。開始時に最大の痛み。両腕の血圧差(10mmHg以上)。
③肺塞栓(PE)
特徴:突然の呼吸困難とともに胸痛。SpO2低下。長距離移動・手術後・長期臥床後に多い。下肢浮腫・深部静脈血栓症(DVT)の既往。
④緊張性気胸
特徴:一側の呼吸音消失。頸静脈怒張。外傷後に多い。生命の危機。
その他の胸痛の鑑別
⑤狭心症
労作時に起きて、安静で数分以内に消える。ニトログリセリンで改善。心筋梗塞は持続する点が異なります。
⑥胸膜炎・肺炎
「深呼吸すると悪化する」が特徴的。発熱・湿性咳嗽を伴う。「刺すような」痛み。
⑦胃食道逆流症(GERD)
食後・横になると悪化する胸焼け感。「燃えるような」感じ。
⑧筋骨格性疼痛
体動・圧迫で悪化する。局所の圧痛あり。「刺すような」「チクチク」。
胸痛の鑑別ポイント早見表
| 疾患 | 痛みの性状 | 増悪因子 | 放散 | 緊急度 |
|---|---|---|---|---|
| 心筋梗塞 | 締め付け | 安静でも持続 | 左肩・顎 | 最高 |
| 大動脈解離 | 引き裂かれ | 開始時最大 | 背部 | 最高 |
| 肺塞栓 | 呼吸困難を伴う | 呼吸で悪化 | なし | 最高 |
| 狭心症 | 締め付け | 労作で悪化 | 左肩 | 高 |
| 胸膜炎 | 刺すような | 深呼吸で悪化 | なし | 中 |
| GERD | 焼けるような | 食後・臥位 | なし | 低 |
| 筋骨格性 | チクチク | 体動・圧迫 | なし | 低 |
OPQRSTで「危険な胸痛か」を見極める
Q(性状)が最重要
- 「締め付け」「押しつぶされる」→ 心筋梗塞・狭心症
- 「引き裂かれる」「ズバッと」→ 大動脈解離
- 「刺すような」「チクチク」→ 筋骨格性・胸膜炎
- 「焼けるような」→ GERD
P(増悪因子)も重要
- 深呼吸で悪化 → 胸膜炎・肋間神経痛・気胸
- 体を押すと悪化 → 筋骨格性
- 安静でも持続 → 心筋梗塞(狭心症は安静で改善する)
薬剤師への実践アドバイス
患者さんから「胸が痛い」と相談を受けた時、以下の質問を意識してください。
必ず確認する3点:
- どんな感じの痛みですか?(Q)
- 何をすると悪化・軽快しますか?(P)
- どこかへ広がりますか?(R)
すぐに受診・救急を勧めるサイン:
- 「今まで感じたことのない痛み」
- 「突然始まった激しい痛み」
- 冷汗を伴う
- 呼吸困難を伴う
- SpO2の低下がある
まとめ
- 胸痛の緊急4疾患:心筋梗塞・大動脈解離・肺塞栓・緊張性気胸
- 痛みの性状(Q):締め付け→心臓系、引き裂かれ→大動脈、刺す→筋骨格
- 深呼吸で悪化→胸膜炎、安静でも持続→心筋梗塞
- 「今まで感じたことのない痛み」「突然の激しい痛み」は緊急
- 薬剤師はOPQRSTで危険な胸痛を見極め、速やかに受診勧奨する
次回は「腹痛の鑑別診断:部位から疾患を絞る」を解説します。
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