こんばんは、田浦マインドです。
「お腹が痛い」という訴えは非常に多い症状ですが、原因は多岐にわたります。今回は腹部の「部位」から疾患を絞る方法と、薬剤師が注意すべきポイントを解説します。
腹痛の部位で疾患を絞る
腹部を9分割(右上・上・左上・右中・中・左中・右下・下・左下)して考えると、痛みの部位から疾患の絞り込みができます。
右上腹部
- 胆石症・急性胆嚢炎(脂肪食後に悪化することが多い)
- 肝炎・肝膿瘍
- 右側の肺炎・胸膜炎
心窩部(みぞおち付近)
- 胃炎・消化性潰瘍(食前・空腹時に悪化することが多い)
- 急性膵炎
- 急性心筋梗塞(要注意!)
心窩部痛は「心筋梗塞」の可能性があります。腹痛でも心電図確認を忘れずに。
左上腹部
- 胃炎・胃潰瘍
- 脾梗塞・脾腫
- 急性膵炎
臍周囲
- 虫垂炎(初期は臍周囲痛から始まり、右下腹部へ移動する)
- 小腸疾患
- 大動脈瘤
右下腹部
- 急性虫垂炎(最も典型的な部位)
- 卵巣嚢腫・卵管捻転(女性)
- 鼠径ヘルニア
左下腹部
- 大腸憩室炎
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 卵巣疾患(女性)
見逃してはいけない腹部緊急疾患
①急性虫垂炎
典型的な症状は「臍周囲痛→右下腹部への移動パターン」。発熱・悪心・食欲低下を伴います。
若い女性の右下腹部痛では虫垂炎だけでなく、卵巣嚢腫捻転・卵管外妊娠(子宮外妊娠)も鑑別が必要です。最後の月経を確認することは女性の腹痛の基本です。
②腸閉塞(イレウス)
腹痛+腹部膨満+排便停止+嘔吐が典型。腸蠕動音の減少・消失。
薬剤師が注意すべき点:麻薬性鎮痛薬(オピオイド)は腸蠕動を抑制します。オピオイドを使用している患者さんが腸閉塞のリスクがあります。
③急性膵炎
「上腹部〜背部への放散痛」が特徴的。飲酒・胆石が主な原因。激しい痛みで動けない状態になることが多いです。
腹痛とともに確認すべき随伴症状
腹痛単独より、随伴症状を合わせて評価することで鑑別精度が上がります。
| 随伴症状 | 示唆する疾患 |
|---|---|
| 発熱 | 感染性(虫垂炎・胆嚢炎・腸炎)など |
| 嘔吐・嘔気 | 腸閉塞・急性膵炎・腸炎 |
| 下痢 | 腸炎(細菌性・ウイルス性)・IBS |
| 血便 | 大腸癌・潰瘍性大腸炎・虚血性腸炎 |
| 黄疸 | 胆道疾患・肝疾患 |
| 無月経+腹痛 | 子宮外妊娠(緊急) |
薬剤師が知っておくべき「薬剤性腹痛」
腹痛の原因として薬剤が関与していることがあります。
NSAIDs・低用量アスピリン → 胃粘膜障害・消化性潰瘍による上腹部痛。胃薬の併用が重要。
抗菌薬(特にクリンダマイシン・セフェム系) → クロストリジウム・ディフィシル腸炎(偽膜性腸炎)のリスク。水様性下痢+腹痛に注意。
オピオイド → 便秘・腸閉塞のリスク。オピオイド誘発性便秘(OIC)に対する対策が重要。
メトホルミン → 消化器症状(悪心・下痢・腹痛)は代表的な副作用。食後服用・少量から開始で軽減できます。
SGLT2阻害薬 → 尿路感染症・性器感染症。重篤なケースでは腹痛を伴う糖尿病性ケトアシドーシスにも注意。
実践例:28歳女性「右下腹部が痛い」
昨夜から右下腹部が痛い。最初はおへその周りだった。吐き気あり、微熱(37.6℃)。
OPQRSTで評価すると:
- O(発症):昨夜から徐々に発症
- Q(性状):持続する鈍痛
- R(部位):臍周囲から右下腹部へ移動
- T(時間):昨夜から持続、悪化傾向
「臍周囲痛→右下腹部への移動パターン」は虫垂炎の典型。
さらに確認すべき:最終月経(女性の腹痛では必須)
→ 至急、外科・婦人科への受診を勧める。
まとめ
- 腹部の部位で疾患を絞ることができる
- 心窩部痛は「心筋梗塞の可能性」を常に念頭に
- 「臍周囲痛→右下腹部移動」は虫垂炎の典型パターン
- 女性の腹痛では最終月経を確認する(子宮外妊娠を除外)
- 薬剤性腹痛(NSAIDs・抗菌薬・オピオイド)も必ず確認する
- 血便・黄疸・意識変容を伴う腹痛は緊急対応
次回は「発熱の鑑別診断:薬剤熱を見逃すな」を解説します。
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