2026年7月11日土曜日

意識障害のAIUEO TIPS:「まず血糖を測れ」を合言葉に【薬歴シリーズ⑳】

 こんばんは、田浦マインドです。

「様子がおかしい」「話がかみ合わない」——意識障害は命に関わる緊急事態です。今回は意識障害の原因を系統的に整理できる「AIUEO TIPS」と、薬剤師の対応について解説します。


意識障害を見たらまず何をするか

意識障害の患者さんを見たら、最初にすることがあります。

「まず血糖を測れ」

低血糖は意識障害の最も重要な原因のひとつで、治療しないと不可逆的な脳障害になります。血糖測定は数秒でできる検査です。


AIUEO TIPSとは

AIUEO TIPSは、意識障害の原因を系統的に覚えるための頭字語です。

文字意味代表的な疾患・状態
AAlcohol/Acidosisアルコール中毒・代謝性アシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシスなど)
IInsulin(血糖異常)低血糖(最重要)・高血糖・糖尿病性ケトアシドーシス
UUremia(尿毒症)腎不全による毒素蓄積
EEncephalopathy/Epilepsy肝性脳症・高血圧性脳症・脳炎・てんかん発作後
OOverdose/Oxygen不足薬物過量・一酸化炭素中毒・低酸素血症
TTrauma/Temperature頭部外傷・低体温症・熱中症
IInfection(感染)敗血症性脳症・髄膜炎・脳炎
PPsychiatric/Poison統合失調症・中毒(農薬・有機リン)
SStroke/Space(脳卒中・脳腫瘍)脳梗塞・脳出血・くも膜下出血

薬剤師が特に注目すべき原因

I(Insulin:低血糖)

低血糖は薬剤師にとって最重要の意識障害原因です。

低血糖の三徴:意識障害・冷汗・頻脈(交感神経症状)

低血糖を起こしやすい薬剤:

  • スルホニル尿素薬(SU薬):グリメピリド・グリクラジドなど
  • インスリン製剤
  • 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

SU薬+食事摂取不足→低血糖のパターンを必ず意識してください。

高齢者・腎機能低下患者ではSU薬の蓄積により低血糖リスクが高まります。

O(Overdose:薬物過量)

薬剤師が気づきやすいポイントです。

  • ベンゾジアゼピン系薬の過量→鎮静・意識障害
  • オピオイドの過量→意識障害+呼吸抑制
  • 抗コリン薬の過量→興奮・混乱

患者さんが複数の病院を受診していて、同効薬が重複していないか確認することも重要です。

E(Encephalopathy:肝性脳症)

肝硬変患者での意識障害は肝性脳症を疑います。

薬剤師が注意すべき点:便秘が肝性脳症を悪化させます。ラクツロースなど下剤を適切に使用して排便をコントロールすることが重要です。


実践例:88歳女性「様子がおかしい」

朝食後1時間で「顔面蒼白、冷や汗、ソワソワしている」状態。

既往歴:2型糖尿病、高血圧

服用薬:グリメピリド1mg・メトホルミン500mg・シタグリプチン50mg・アムロジピン5mgなど

バイタル:体温35.6℃・血圧180/98mmHg・心拍数98回/分

AIUEO TIPSで考える

I(Insulin)→ SU薬(グリメピリド)+食事後1時間→低血糖の典型パターン!

低血糖三徴:顔面蒼白(青白い)・冷や汗・ソワソワ(頻脈による交感神経症状)が全て揃っています。

薬剤師の対応:

  1. 血糖測定(まず血糖を測れ)
  2. 意識があれば砂糖・ジュースを摂取させる
  3. 医師・看護師に「SU薬による低血糖の可能性があります」と報告
  4. 直近のHbA1cも確認(5.5%など低値なら低血糖継続のリスクが高い)

薬剤師として低血糖を予防する

低血糖は「予防」が最重要です。

リスクが高い状況

  • 高齢者(腎機能低下によりSU薬が蓄積)
  • 食事量が少ない・食事を抜く場面
  • 腎機能が低下している患者
  • SU薬+インスリンの組み合わせ
  • 飲酒(アルコールは糖新生を抑制)

薬剤師の介入ポイント

  • 「シックデイ(体調不良の日)の対応」を必ず説明する
  • 食事が摂れない時はSU薬・インスリンの調整が必要であることを患者・家族に指導
  • 低血糖症状と対処法(糖分を摂る)を繰り返し指導する

意識障害の緊急度を判断:JCSスケール

日本では意識レベルの評価にJCS(Japan Coma Scale)がよく使われます。

数値状態
0意識清明
1今ひとつはっきりしない
2見当識障害(日付・場所・人がわからない)
3名前・生年月日が言えない
10呼びかけで容易に開眼する
20大きな声・身体の揺さぶりで開眼する
30痛み刺激でかろうじて開眼する
100〜300刺激でも開眼しない(100は手を動かす、300は全く動かない)

まとめ

  • 意識障害を見たら「まず血糖を測れ」
  • AIUEO TIPS:A(アルコール・アシドーシス)・I(血糖異常)・U(尿毒症)・E(脳症・てんかん)・O(過量・低酸素)・T(外傷・体温)・I(感染)・P(精神・中毒)・S(脳卒中)
  • 薬剤師が特に注目:I(低血糖)・O(薬物過量)・E(肝性脳症)
  • SU薬+食事摂取不足→低血糖のパターンを必ず意識する
  • 低血糖は「予防」が最重要。シックデイ指導を徹底する

次回は薬歴シリーズ最終回「ワンセンテンスサマリー:デキる薬剤師の情報伝達術」を解説します。


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