2026年8月31日月曜日

RA患者へのワクチン接種・手術時の休薬管理【RAシリーズ⑪】

 免疫抑制状態にあるRA患者さんは感染症リスクが高く、ワクチン接種が非常に重要です。また手術が必要な場合は生物学的製剤・JAK阻害薬の休薬が必要です。今回は薬剤師として必ず知っておくべき知識を解説します。


なぜRA患者さんにワクチンが重要なのか

MTX・生物学的製剤・JAK阻害薬などの免疫抑制療法を受けているRA患者さんは、感染症リスクが健常人より著しく高い状態にあります。

特に重篤化しやすい感染症:

  • インフルエンザ
  • 肺炎球菌感染症(肺炎・菌血症)
  • 帯状疱疹
  • 新型コロナウイルス感染症

ワクチン接種は感染症から患者さんを守る最重要の予防策です。


接種推奨のワクチン

インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)

毎年1回の接種が推奨

免疫抑制療法中でも接種可能(不活化ワクチンのため)。ただし免疫応答が低下している可能性があるため、早めの接種を勧める。

薬剤師からの声かけ:「毎年秋にインフルエンザの予防接種はされていますか?」


肺炎球菌ワクチン

2種類のワクチンがあります:

PCV15/PCV20(肺炎球菌結合型ワクチン・ニューモバックス上位互換): 初回接種に推奨。T細胞依存性の免疫応答を誘導。

PPSV23(ニューモバックス®NP): 多価莢膜ポリサッカライドワクチン。65歳以上の定期接種。

免疫抑制療法を受けているRA患者さんには積極的に接種を推奨します。


帯状疱疹ワクチン(特にJAK阻害薬使用患者)

シングリックス®(組換えワクチン:RSV-V):

  • 2回接種(初回接種→2ヶ月後に2回目)
  • 免疫抑制患者にも使用可能(生ワクチンではないため)
  • 帯状疱疹予防効果:高齢者でも90%以上
  • JAK阻害薬・生物学的製剤使用患者に強く推奨

水痘・帯状疱疹ワクチン ビケン® (生ワクチン):

  • 生ワクチンのため、免疫抑制療法中は原則禁忌

薬剤師からの声かけ:「帯状疱疹のワクチン(シングリックス)接種はされましたか?特に今の薬(JAK阻害薬)を使っている患者さんには重要です」


新型コロナウイルスワクチン

RAを含む免疫抑制状態の患者さんは、重症化リスクが高いカテゴリに入ります。

JAK阻害薬使用患者へのACR推奨(2021年): 「ワクチン接種後1週間はJAK阻害薬を休薬する(中等度の推奨)」


生ワクチン接種の注意点

生ワクチン(生きた弱毒化ウイルス・細菌を含む)は免疫抑制患者には原則禁忌です。

生ワクチンの例:

  • 麻疹・風疹(MR)ワクチン
  • 水痘ワクチン
  • 帯状疱疹ワクチン
  • BCGワクチン
  • 黄熱ワクチン

免疫抑制療法開始前に、接種が必要な生ワクチンを確認・接種しておくことが重要です。


妊娠中にTNF阻害薬を使用した母親の新生児へのワクチン

妊娠22週目以降にTNF阻害薬(セルトリズマブを除く)を使用した場合:

赤ちゃんは生後6ヶ月を過ぎるまで生ワクチンを受けてはいけない

理由:胎盤を通して母親のTNF阻害薬が赤ちゃんの体内に移行し、生後6ヶ月ごろまで薬が残っている可能性があるためです。

セルトリズマブペゴル(シムジア®)のみFc部分がないため胎盤通過がほとんどなく、この制限が適用されません。


手術時の休薬管理

RA患者さんが人工関節置換術などの手術を受ける場合、感染予防のためDMARDsの休薬が必要です。

ACR/AAHKS推奨(2017年)による休薬期間:

薬剤投与間隔休薬期間
csDMARDs(MTXなど)種々継続(休薬不要)
インフリキシマブ6〜8週間7〜9週
エタネルセプト1〜2回/週2週
アダリムマブ2週間3週
トシリズマブ(静注)4週間5週
トシリズマブ(皮下注)1〜2週間2週
アバタセプト(静注)4週間5週
アバタセプト(皮下注)1週間2週
ゴリムマブ4週間5週
セルトリズマブ2〜4週間3〜5週
トファシチニブ1日2回(半減期3時間)1週
バリシチニブ1日1回(半減期14時間)記載なし

術後の再開:創治癒確認後、一般的には術後14日で再開。


薬剤師の役割:術前確認のチェックリスト

手術が決まったRA患者さんへの薬剤師の確認事項:

□ 使用中の生物学的製剤・JAK阻害薬の名称と投与スケジュール 

□ 休薬のタイミング(直前の投与日を確認) 

□ 術後の再開時期の確認 

□ MTXは継続でよいことの確認(主治医へ確認) 

□ ステロイドを使用している場合は手術時のステロイドカバー


まとめ

  • RA患者は免疫抑制状態→感染症リスクが高い→ワクチン接種が重要
  • 推奨ワクチン:インフルエンザ(毎年)・肺炎球菌・帯状疱疹(シングリックス)
  • JAK阻害薬使用患者:帯状疱疹ワクチン(シングリックス)を強く推奨
  • 生ワクチンは免疫抑制療法中には禁忌(ビケン®帯状疱疹ワクチンは禁忌)
  • 妊娠22週以降のTNF阻害薬使用→新生児は生後6ヶ月まで生ワクチン禁忌(セルトリズマブ除く)
  • 手術時のDMARDs休薬:生物学的製剤は2〜9週前から休薬。MTXは継続。術後14日で再開

次回はシリーズ最終回「薬剤師のRA服薬支援とTake Home Message」をお届けします。


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