こんばんは、田浦マインドです。
「CSCATTT(シーエスキャットティースリー)」——災害医療に関わる医療従事者なら必ず知っておくべき、国際標準の行動フレームワークです。
今回はこのCSCATTTと、薬局薬剤師向けに拡張した「CSCATPPP」をわかりやすく解説します。
CSCATTTとは
大規模災害時に医療チームが「何を・どの順番で・どのように」行動するかを示した国際標準フレームワークです。英国DMATが開発し、日本DMATも採用しています。
頭文字7文字にはそれぞれ意味があります。
C — Command & Control(指揮・統制)
最初に指揮系統を確立する。
誰が指揮官かを明確にし、情報を一元管理します。指揮系統が混乱すると、どんなに優秀なチームも動けません。
薬局での実践例:
- 管理薬剤師が「災害時指揮官」として初動を指揮
- スタッフの安否確認と役割分担を即座に決定
- 患者対応・在庫管理・外部連絡の担当を明確化
- 記録担当を置き、すべての判断・連絡を記録する
S — Safety(安全確保)
安全確保の優先順位は「自己 → 現場 → 傷病者」。
自分が倒れれば誰も助けられません。二次災害を防ぐことが最優先です。
薬局特有の安全ポイントとして、冷蔵医薬品(インスリン等)の温度管理、毒薬・劇薬の散乱防止、医療廃棄物の適切な処理なども含まれます。
C — Communication(情報伝達)
「正しい情報を・正しい相手に・正しいタイミングで」届けることが命を救う。
情報伝達の失敗が最も多くの死に関わります。
災害時は電話が繋がりにくい。FAX・SNS・無線など、代替手段を平時から準備しておくことが大切です。
報告フォーマットとして「SBAR」が有効です。
- S(Situation):状況「インスリン患者が3日間注射できていません」
- B(Background):背景「2型糖尿病で発症10年、グラルギン10単位/就寝前」
- A(Assessment):評価「ケトアシドーシスの前兆と判断。血糖測定器もなし」
- R(Recommendation):提案「インスリンと血糖測定器の確保を要請します」
A — Assessment(評価・状況把握)
「今何が起きているか」を迅速に把握し、必要資源を見積もる。
情報のない状態でいくら行動しても、的外れな対応になります。
薬局での発災後30分以内チェックリスト:
- □ 建物・設備の被害状況
- □ スタッフ全員の安否
- □ 冷蔵庫・医薬品の状態
- □ 来局患者・問い合わせ数
- □ 電話・電力・水道の状態
T — Triage(トリアージ)
傷病者を重症度で分類し、対応優先度を決定する。
「全員を平等に救おうとすると、全員を救えなくなる」——これがトリアージの哲学です。
- 赤(Ⅰ):最優先。生命危機があるが処置すれば救命可能
- 黄(Ⅱ):待機的。数時間は待てる
- 緑(Ⅲ):軽症。しばらく待てる
- 黒(Ⅳ):死亡・救命不可
T — Treatment(治療・対応)
トリアージ区分に応じた処置を行う。
重要なのは「継続的な再評価」です。最初に緑だった患者が後から赤になることも、その逆もあります。状態は常に変化します。
T — Transport(搬送)
適切な医療機関へ搬送する。
薬剤師にとっての搬送支援とは、「適切な情報を添えて患者を繋ぐ」こと。薬剤情報なき搬送は受入病院に余計な負担をかけます。
CSCATPPP — 薬剤師版への拡張
CSCATTTの最後の3T(Triage・Treatment・Transport)を、薬局薬剤師の視点で読み替えたものがCSCATPPPです。
| 元の原則 | 薬剤師版 | 内容 |
|---|---|---|
| T(Triage) | P(Pharmaceutical Triage) | 薬事トリアージ:薬剤継続の緊急度を赤・黄・緑で判断 |
| T(Treatment) | P(Pharmaceutical Care) | 薬剤師ケア:服薬情報収集・一包化・副作用モニタリング |
| T(Transport) | P(Patient Transport Support) | 患者搬送支援:重症化患者を医師・救急に確実につなぐ |
CSCA(組織・準備フェーズ)は同じ、TTT(現場活動フェーズ)を薬剤師版に読み替えた——このフレームワークが頭に入っていれば、どんな災害現場でも「次に何をすべきか」が見えてきます。
まとめ
CSCATTTの7原則:
- C:まず指揮系統を確立する
- S:自己保護を最優先に
- C:SBARフォーマットで正確に伝える
- A:「今何が起きているか」をまず評価する
- T:トリアージで優先度を決める
- T:区分に応じた対応と継続的な再評価
- T:適切な場所へ・情報とともに搬送
「知っている」と「できる」は違います。ぜひ研修や訓練を通じて実践的に身につけてください。
次回は、薬剤師版トリアージである「薬事トリアージ」について詳しく解説します。
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