免疫抑制状態にあるRA患者さんは感染症リスクが高く、ワクチン接種が非常に重要です。また手術が必要な場合は生物学的製剤・JAK阻害薬の休薬が必要です。今回は薬剤師として必ず知っておくべき知識を解説します。
なぜRA患者さんにワクチンが重要なのか
MTX・生物学的製剤・JAK阻害薬などの免疫抑制療法を受けているRA患者さんは、感染症リスクが健常人より著しく高い状態にあります。
特に重篤化しやすい感染症:
- インフルエンザ
- 肺炎球菌感染症(肺炎・菌血症)
- 帯状疱疹
- 新型コロナウイルス感染症
ワクチン接種は感染症から患者さんを守る最重要の予防策です。
接種推奨のワクチン
インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)
毎年1回の接種が推奨
免疫抑制療法中でも接種可能(不活化ワクチンのため)。ただし免疫応答が低下している可能性があるため、早めの接種を勧める。
薬剤師からの声かけ:「毎年秋にインフルエンザの予防接種はされていますか?」
肺炎球菌ワクチン
2種類のワクチンがあります:
PCV15/PCV20(肺炎球菌結合型ワクチン・ニューモバックス上位互換): 初回接種に推奨。T細胞依存性の免疫応答を誘導。
PPSV23(ニューモバックス®NP): 多価莢膜ポリサッカライドワクチン。65歳以上の定期接種。
免疫抑制療法を受けているRA患者さんには積極的に接種を推奨します。
帯状疱疹ワクチン(特にJAK阻害薬使用患者)
シングリックス®(組換えワクチン:RSV-V):
- 2回接種(初回接種→2ヶ月後に2回目)
- 免疫抑制患者にも使用可能(生ワクチンではないため)
- 帯状疱疹予防効果:高齢者でも90%以上
- JAK阻害薬・生物学的製剤使用患者に強く推奨
水痘・帯状疱疹ワクチン ビケン® (生ワクチン):
- 生ワクチンのため、免疫抑制療法中は原則禁忌
薬剤師からの声かけ:「帯状疱疹のワクチン(シングリックス)接種はされましたか?特に今の薬(JAK阻害薬)を使っている患者さんには重要です」
新型コロナウイルスワクチン
RAを含む免疫抑制状態の患者さんは、重症化リスクが高いカテゴリに入ります。
JAK阻害薬使用患者へのACR推奨(2021年): 「ワクチン接種後1週間はJAK阻害薬を休薬する(中等度の推奨)」
生ワクチン接種の注意点
生ワクチン(生きた弱毒化ウイルス・細菌を含む)は免疫抑制患者には原則禁忌です。
生ワクチンの例:
- 麻疹・風疹(MR)ワクチン
- 水痘ワクチン
- 帯状疱疹ワクチン
- BCGワクチン
- 黄熱ワクチン
免疫抑制療法開始前に、接種が必要な生ワクチンを確認・接種しておくことが重要です。
妊娠中にTNF阻害薬を使用した母親の新生児へのワクチン
妊娠22週目以降にTNF阻害薬(セルトリズマブを除く)を使用した場合:
赤ちゃんは生後6ヶ月を過ぎるまで生ワクチンを受けてはいけない
理由:胎盤を通して母親のTNF阻害薬が赤ちゃんの体内に移行し、生後6ヶ月ごろまで薬が残っている可能性があるためです。
セルトリズマブペゴル(シムジア®)のみFc部分がないため胎盤通過がほとんどなく、この制限が適用されません。
手術時の休薬管理
RA患者さんが人工関節置換術などの手術を受ける場合、感染予防のためDMARDsの休薬が必要です。
ACR/AAHKS推奨(2017年)による休薬期間:
| 薬剤 | 投与間隔 | 休薬期間 |
|---|---|---|
| csDMARDs(MTXなど) | 種々 | 継続(休薬不要) |
| インフリキシマブ | 6〜8週間 | 7〜9週 |
| エタネルセプト | 1〜2回/週 | 2週 |
| アダリムマブ | 2週間 | 3週 |
| トシリズマブ(静注) | 4週間 | 5週 |
| トシリズマブ(皮下注) | 1〜2週間 | 2週 |
| アバタセプト(静注) | 4週間 | 5週 |
| アバタセプト(皮下注) | 1週間 | 2週 |
| ゴリムマブ | 4週間 | 5週 |
| セルトリズマブ | 2〜4週間 | 3〜5週 |
| トファシチニブ | 1日2回(半減期3時間) | 1週 |
| バリシチニブ | 1日1回(半減期14時間) | 記載なし |
術後の再開:創治癒確認後、一般的には術後14日で再開。
薬剤師の役割:術前確認のチェックリスト
手術が決まったRA患者さんへの薬剤師の確認事項:
□ 使用中の生物学的製剤・JAK阻害薬の名称と投与スケジュール
□ 休薬のタイミング(直前の投与日を確認)
□ 術後の再開時期の確認
□ MTXは継続でよいことの確認(主治医へ確認)
□ ステロイドを使用している場合は手術時のステロイドカバー
まとめ
- RA患者は免疫抑制状態→感染症リスクが高い→ワクチン接種が重要
- 推奨ワクチン:インフルエンザ(毎年)・肺炎球菌・帯状疱疹(シングリックス)
- JAK阻害薬使用患者:帯状疱疹ワクチン(シングリックス)を強く推奨
- 生ワクチンは免疫抑制療法中には禁忌(ビケン®帯状疱疹ワクチンは禁忌)
- 妊娠22週以降のTNF阻害薬使用→新生児は生後6ヶ月まで生ワクチン禁忌(セルトリズマブ除く)
- 手術時のDMARDs休薬:生物学的製剤は2〜9週前から休薬。MTXは継続。術後14日で再開
次回はシリーズ最終回「薬剤師のRA服薬支援とTake Home Message」をお届けします。
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