こんばんは、田浦マインドです。
今回は、熊本地震の仮設診療所で実際に起きた「薬の混在問題」についてお伝えします。
一見マニアックな話に聞こえるかもしれませんが、これが調剤間違いの大きなリスク要因になりました。薬剤師だからこそ気づける、現場のリアルな課題です。
複数の病院から薬が集まってくる
仮設診療所には、複数の病院・支援チームがそれぞれ持参した医薬品が集まります。
ここで問題が起きました。
同じような薬なのに、名前が違う。同じ名前なのに、色が違う。同じ成分なのに、パッケージが違う。
具体的にどんな問題が起きたか、実例をご紹介します。
実際に起きた混在の例
① 同効能薬(効き目は同じだが成分が違う)
セルベックスカプセルとムコスタ錠——どちらも胃粘膜保護薬ですが、成分は異なります。効能は近くても、同じ薬ではありません。どっちかで良いですよね・・・(笑)
② 同一成分の先発品と後発品
デパス錠とエチゾラム錠——同じ成分(エチゾラム)ですが、前者は先発品、後者はジェネリック医薬品です。慣れていないスタッフには同じ薬とわかりにくい。
③ ジェネリックのメーカー違い
ロキソプロフェン錠「日医工」とロキソプロフェン錠「メディサ新薬」——成分・用量は全く同じですが、製薬メーカーが違います。見た目が微妙に異なり、「これ同じ薬?」と混乱が生じました。
④ 包装変更前後の製品の混在
ブチブロン錠とブチルスコポラミン錠——同一メーカーの同一成分薬ですが、包装・製品名が変更前後で混在していました。
同じワセリンでも色が違う!
さらに驚いたのは軟膏です。
ワセリンとプロペト——どちらも成分は「白色ワセリン」で同じです。しかし製薬メーカーが違うため、軟膏の色が異なっていました。
「これ、同じ薬ですか?」と看護師から確認が来た時、薬剤師として即座に「同成分です、大丈夫です」と答えられる——これが薬剤師の仕事です。
薬袋・薬情なしでの手書き識別
もうひとつ深刻な問題が起きました。
カロナール錠200mgと酸化マグネシウム錠330mgの外観包装が酷似していて、見分けがつかない——という状況です。
薬袋も薬剤情報提供文書(薬情)も印刷できない環境だったため、間違わないよう手書きで薬剤情報を記載し、薬にセロテープで貼り付けて提供しました。
アナログですが、これが患者さんの安全を守るための現実的な対応でした。
吸入薬がうまく吸えない患者さんへの工夫
もうひとつ印象に残っている工夫があります。
避難所には吸入薬(喘息・COPDなど)を使用している患者さんがいました。しかし普段と違う環境・ストレス・疲労の中で、うまく吸入できない方が増えていました。
そこで——紙コップを使って、簡易吸入補助器具(スペーサー)を現地で手作りしました。
市販のスペーサーがない環境でも、工夫次第で代替品が作れます。「できないと言わない」「何とかする」——この発想が、現場での薬剤師に求められる姿勢だと感じました。
SNSを活用した薬の在庫管理
今回の活動で活用できたのが、当日使用した薬剤リストと補充請求リストをSNSで拠点本部に送信するという方法です。
大規模災害時に公衆無線LAN「00000JAPAN」が無料開放されたため、避難所でもSNSを使用した情報共有が可能となりました。
翌日の人員・物資補充と一緒に、必要な薬を福岡の本部から届けてもらう——このサイクルで在庫管理を行いました。
夜23時頃に薬剤リストを送信し、翌日の昼に届く。この「24時間サイクル」が確立されてからは、薬の欠品不安が大幅に減りました。
今後の課題
この活動を通じてわかった最大の課題は——平時からの準備の必要性です。
複数チームが持参する医薬品リストを整備し、一元的な薬剤管理体制を構築しておくこと。混在しやすい薬の組み合わせをあらかじめ把握しておくこと。
「発災後の混乱した現場でゼロから考える」のでなく、「平時に十分に検討し整備しておくこと」が、災害時の薬剤師の活動を大きく左右します。
まとめ
- 複数施設からの薬が集まると、同効薬・先後発混在・メーカー違いが発生する
- 見た目が似ていても成分が違う薬があり、調剤間違いのリスクがある
- 薬袋・薬情なしの環境では手書き対応で患者の安全を守る
- 吸入補助器具を手作りするなど、ないものは工夫する
- SNSを活用した在庫管理が有効
- 平時からの薬剤リスト整備が最重要課題
次回は、災害対応の国際標準フレームワーク「CSCATTT」と、薬剤師版の「CSCATPPP」について解説します。
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