2026年6月6日土曜日

深夜5時のオンコール「心筋梗塞の患者が来た!」離島薬剤師の当直事情【離島医療シリーズ③】

 こんにちは、田浦マインドです。

離島医療シリーズ第3回は、離島薬剤師の「オンコール業務」についてです。

深夜・早朝に鳴り響く電話——その先にあったリアルなエピソードをお伝えします。


離島の病院に薬剤師の当直はない

まず知っておいていただきたいのは、離島の病院には薬剤師の当直がありません。

全ての病院が「オンコール体制」です。

薬剤師がいない時間帯は、医師の指示のもとで看護師が調剤を行います。ただし麻薬については「薬剤師オンコールが麻薬の調剤を行う」という院内ルールを定めている病院もありました。

つまり——深夜でも早朝でも、必要があれば電話がかかってきます。


どんな内容のオンコールがあるのか?

実際にどんな内容で呼び出されたかをご紹介します。

  • 「薬がどこにあるかわからない」
  • 「分包機の使い方がわからない(詰まった・紙がなくなった)」
  • 「粉薬・水薬の計算の仕方がわからない」
  • 「手書きカルテで医師が処方した薬が何なのかわからない」
  • 「〇〇という薬が必要なので手配してほしい」
  • 「薬物中毒の患者が救急で来たので調べてほしい」
  • 「〇〇と同じ成分や同系統薬は何がある?」

バラエティに富んでいますね(笑)。

そして驚いたのは——次に勤務した山川病院(僻地の病院)に勤務していた時に、沖永良部病院からオンコールがかかってきたこと。 転勤した後も、別の島の病院から電話がかくることもあるのです(笑)。それだけ病院同士のつながりが強く、頼り合う文化がありました。


忘れられないオンコールの話

ある朝、午前5時頃に電話が鳴りました。

「心筋梗塞の患者が今来ています。麻薬を使いたいのですが!!」

布団から飛び起きました。

自宅から病院まで走って2〜3分。ダッシュで駆けつけ、塩酸モルヒネ注を払い出しに行きました。

離島では病院と自宅が近い場合が多く、それが迅速な対応を可能にしています。

この経験は今でも鮮明に覚えています。「薬剤師がいてくれてよかった」という言葉は、何にも代えられません。


生血輸血——4回、自分の血を捧げた

もうひとつ、離島ならではの経験をお話しします。

生血輸血という言葉を聞いたことがありますか?

離島では、緊急時に必要な血液が足りないという事態が起こることがあります。そんな時、病院スタッフが直接献血して輸血するのが「生血輸血」です。

優先順位は ① 勤務中の職員 → ② 勤務外の職員 → ③ 自衛隊 → ④ 一般の志願者

私は沖永良部島の2年間で、4回、生血輸血に協力しました。

そして後日、自分が献血した患者さんに服薬指導できた時——「献血してよかった」と心から実感しました。

また、RHマイナス型の血液が必要になった時——町内会の放送で「私の血を使ってください」と呼びかけが流れました。

島民の方が駆けつけてくれました。

「誰かのために」という温かい心に、胸が熱くなりました。


島外への救急搬送手段

島で対応しきれない重症患者は、島外へ搬送します。

その手段は3つ。

① 徳洲号 徳洲会グループの離島病院が共同で所有する6人乗りのセスナ機。主に救急患者の移送や、定期便が欠航した際の医師の移動に使用します。

② 自衛隊のヘリコプター 緊急時に要請できます。

③ U-PITS(ユーピッツ) 沖縄本島周辺離島からの患者搬送を目的とした民間の救急ヘリコプター搬送システムです。

沖永良部病院が開院した年、島外搬送が半分程度まで減ったと聞きました。「医療が島で完結できる」——これがどれほど島民にとって安心につながるか、実感した瞬間でした。


まとめ

  • 離島の薬剤師はオンコール体制で、深夜・早朝の呼び出しがある
  • 麻薬払い出しや緊急対応を単独で判断・対応する場面がある
  • 生血輸血に4回協力——島の医療の一員として血を捧げた体験
  • 島外搬送にはセスナ・自衛隊ヘリ・民間ヘリの3手段がある

次回は、離島薬剤師の「悩みと閉塞感」について正直にお話しします。


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