こんばんは、田浦マインドです。
離島医療シリーズ第2回は、離島薬剤師の最大の悩みと言っても過言ではない「薬の管理」についてです。
都市部ではあたりまえに翌日届く薬が、離島では全く別の話になります。
離島には医薬品の卸問屋がない
まず大前提として、沖永良部島には医薬品の卸問屋がありません。
都市部では当日や翌日に薬が届くのが当たり前。でも離島では、基本的に船便で薬が運ばれてきます。
鹿児島からの船便ルートはこんな感じです。
鹿児島 → 喜界 → 奄美大島 → 徳之島 → 沖永良部 → 与論 → 沖縄
発注しても、すぐには薬が届きません。基本は翌日納品。
緊急に薬が必要な時は航空便を使います。奄美大島便(1日1便)か鹿児島便(1日3便)の飛行機出発1時間前までに薬を預ければ、なんとか届けてもらえます。または隣の与論病院に午前中に連絡すれば、その日のうちに借りることもできました。
年末年始の「薬が入ってこない」危機
離島勤務で最も緊張した経験のひとつを話します。
2010年12月30日のこと。
この日、来月分の薬がまとめて大量に入ってくる予定でした。
しかし——強風波浪で、船も飛行機も欠航。
薬が全く入ってこなかったのです。
そして翌31日も。1月1日も。2日も。
2011年1月3日まで、ずっと薬が入ってこない状態が続きました。
病院の薬は欠品の連続。抗生剤も、循環器系の薬も、どんどん無くなっていく。治療の選択肢がどんどん狭まっていく——。
この時、島に薬剤師は自分一人だけでした。
「代わりに使える薬はないか」「この患者さんにはどう対応するか」——ひたすら考え続けました。
これは、災害医療の現場に近い状況だったと思います。
麻薬が届くのに3〜5日かかる
もうひとつ、離島ならではの苦労が「麻薬の購入」です。
通常、麻薬は書類のやり取りが必要です。離島の場合の流れはこうです。
- 病院から麻薬譲受書を医薬品卸に送る
- 翌日か翌々日に卸に届く→麻薬現品と譲渡書を送ってもらう
- 翌日か翌々日に薬が届く
つまり、注文から現品到着まで3〜5日かかってしまいます。
「先に現品を送ってもらって、後から書類を送ればいいじゃないか」と何度思ったことか…。法律上できないのですが、離島でモルヒネが足りなくなる不安は、都市部の薬剤師には想像しにくいかもしれません。
実際に起きた「麻薬100箱事件」
麻薬管理で笑えない失敗談をひとつ。
あるターミナルの患者さんの治療で、塩酸モルヒネ注50mgが1日に40A(8箱)近く使われていた時期がありました。
3連休が来る。「連休中も足りるように」と100箱発注したところ——連休明け前に投与が中止になり、100箱(約67万円分)の在庫が残ってしまいました。
しかも麻薬は返品できない。
その後、他の患者さんへの投与で少しずつ使いながら、約2年かけてようやく8箱まで在庫を減らすことができました。
離島の薬品管理がいかに難しいか、伝わりますでしょうか。
台風が来たら食べ物も薬も入ってこない
台風接近時には、船も飛行機も欠航になります。
食べ物が入ってこない。薬も入ってこない。
スーパーから食材が消えるので、台風前は早めに買い込む。寮が浸水した時は病院に避難する。
「早め早めの在庫管理」は離島薬剤師の最大のスキルかもしれません。
もし薬が1週間入ってこなかったら?
「もし薬が1週間入ってこなかったら、あなたの病院はどうなりますか?」
都市部で働く薬剤師の方にも、一度真剣に考えてほしい問いです。
離島では、これが現実に起こりうることなのです。
この経験は、後に私が災害医療に携わる上での大きな土台になりました。
まとめ
- 離島には医薬品の卸問屋がなく、基本は船便翌日納品
- 悪天候で欠航が続くと薬が全く入ってこない
- 麻薬の購入には3〜5日かかる
- 台風前の早め在庫管理が離島薬剤師の必須スキル
次回は、離島でのオンコール業務のリアルをお届けします。
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