こんばんは、田浦マインドです。
今回は薬歴シリーズの総まとめとして「よくあるNG例と修正例」を5つ紹介します。自分の薬歴と照らし合わせてセルフチェックしてみてください。
NG例①:事務的な記録になってしまう
悪い例
S:体調良好。
O:ロキソニン錠60mg 3T 3×毎食後 14日分
A:特に問題なし。
P:用法用量を説明した。何を確認したのか、何を指導したのかが全く伝わりません。次回この薬歴を読んだ別の薬剤師は何もわかりません。
改善例
S:「先月から続いていた肩こりが良くなってきた」と自己申告あり。
痛みの程度は10段階で8→4に改善。
O:ロキソニン錠60mg 3T 3×毎食後 14日分(前回から変更なし)
A:NSAIDsの効果発現が認められるが、完全に症状は消失していない。
長期服用による胃腸障害リスクに注意。
P:NSAIDsの長期服用リスクについて説明。
胃部不快感の有無を確認し、症状出現時は報告するよう指導。
次回来局時に症状の変化を確認予定。NG例②:SOAPの要素が混在している
悪い例
S:アムロジピン5mg服用中。血圧高め。
O:血圧手帳確認、服薬指導実施。
A:降圧剤の効果不十分。
P:塩分制限について説明した。SにはOの内容が混ざり、OにはPの内容が混ざっています。S・O・A・Pの役割を意識して書き分けましょう。
改善例
S:「最近、朝の血圧が高めです」との訴えあり。めまいなどの症状はなし。
減塩に取り組んでいるが、外食が週3回程度あるとのこと。
O:アムロジピン5mg 1T 1×朝食後
血圧手帳:145-155/85-90mmHg(朝)、135-140/80-85mmHg(夕)
A:朝の血圧値が目標値(140/90mmHg未満)を超えており、降圧効果が不十分。
夕食時の塩分摂取が影響している可能性あり。
P:外食時の塩分摂取を減らす具体的な方法(汁物を残す・醤油を控えるなど)を提案。
2週間後の血圧値の変化を確認予定。NG例③:個別性が欠如している
悪い例
S:特に問題なし。
O:メトホルミン錠250mg 6T 3×毎食後
A:2型糖尿病治療中。
P:低血糖症状について説明した。この薬歴を読んでも「どんな患者さんなのか」が全くわかりません。
改善例
S:「先日、昼食を抜いたら手が震えて冷や汗が出た」との訴え。
症状は砂糖入りジュースを飲んで回復。
最近、ダイエットのため食事量を減らしているとのこと。
O:メトホルミン錠250mg 6T 3×毎食後
HbA1c 7.2%(1ヶ月前)
A:食事量減少に伴う低血糖症状の出現。メトホルミン単独では通常低血糖リスクは
低いが、食事摂取不足により相対的な血糖低下が生じている可能性。
P:低血糖の症状と対処法について再度説明。
食事を抜かずに1食あたりの量を調整する方法を提案。
低血糖時の対応セットの携帯を推奨。
次回来局時に食事状況と血糖値を確認予定。NG例④:臨床判断の記載が不足している
悪い例
S:咳が出る。
O:プラバスタチン10mg 1T 1×夕食後
A:副作用の可能性。
P:医師に相談するよう伝えた。「何の副作用?」「なぜそう考えた?」が全く書かれていません。根拠のない評価では信頼性がありません。
改善例
S:「2週間前から就寝時に乾いた咳が出るようになった」と訴えあり。
痰や発熱はなし。花粉症などのアレルギー歴なし。
O:プラバスタチン10mg 1T 1×夕食後(2ヶ月前から服用開始)
リシノプリル5mg 1T 1×朝食後(2週間前に開始)
A:咳の発症時期とACE阻害薬(リシノプリル)開始時期が一致。
ACE阻害薬による空咳の副作用を疑う。
スタチンでは一般的に咳症状は起こりにくい。
P:ACE阻害薬の副作用(空咳の発生機序・出現率約10%)について説明。
副作用疑い報告書を作成し、担当医に情報提供。
ARBなど他クラスの降圧薬への変更を検討してもらうよう提案。
次回来局時に症状の変化を確認予定。NG例⑤:患者視点が欠如している
悪い例
S:内服コンプライアンス不良。
O:レボドパ・カルビドパ配合錠 3T 3×毎食後
A:薬効が十分に得られていない。
P:内服の重要性を説明した。「コンプライアンス不良」と言っても、なぜ飲めないのかを把握しなければ解決策は立てられません。
改善例
S:「薬を飲むタイミングが難しく、時々飲み忘れる」と訴えあり。
特に昼食時の服用が困難とのこと。独居で薬の管理は自分で行っている。
O:レボドパ・カルビドパ配合錠 3T 3×毎食後
服薬状況:朝・夕はほぼ服用できているが、昼は週2-3回忘れるとのこと。
A:昼食時の服薬遵守率が低く、午後の症状悪化に関連している可能性あり。
独居であり、服薬管理のサポートが必要。
P:一包化調剤の提案(朝・昼・夕で色分けし、視認性向上)。
昼食時にアラームを設定するよう助言。
次回来局時に一包化後の服薬状況と症状を確認。よくあるNG薬歴 チェックリスト(まとめ)
- □ 患者の発言(S)と薬剤師の評価(A)が混ざっていないか
- □ 数値や頻度など具体的に記録しているか
- □ 次回確認すべきことを必ず残しているか
- □ 「指導した」「説明した」だけで終わっていないか
- □ 個別性のある記録になっているか(誰の薬歴でも使えるような汎用的な文章になっていないか)
まとめ
薬歴の5大NG:
- 事務的な記録(何をしたかがわからない)
- SOAPの要素が混在(S・O・A・Pの役割を無視)
- 個別性の欠如(誰の薬歴かわからない)
- 臨床判断の根拠不足(なぜそう評価したかがわからない)
- 患者視点の欠如(「なぜ飲めないか」を把握していない)
良い薬歴は「次回読んだ別の薬剤師が、患者の状況を理解できる記録」です。
次回からはPOS(問題志向型システム)シリーズとして、薬剤師の服薬指導の考え方を解説していきます。
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